LOGIN10年後、人々は悲劇の国キュアリーハートをこう呼んだ。
赤い地獄(レッドヘル)と。 今では化け物が住処としているらしく人間の立ち入りを禁止した。 化け物は人間の心臓と目が好きらしくそれを取って食べるので人は化け物の事をまるで悪魔のようだと言う。 そして人間の心臓を求めて他の国へ移動する悪魔もいる。 しかしこの世にはそんな悪魔に対抗する力があり、それを人々はこう呼んだ。 ー悪魔祓い(デビルブレイカー)と。 「ねぇ、聞いた?隣の国でまた悪魔の被害があったらしいわよ?」 「またなの?もう何度目なの?」 「ほんと、いい加減やめてほしいよねー。どうせ悪魔なんて噂話でしょ?」 学校帰りの女子高生たち。 ここはあのレッドヘルからかなり東の方に離れた静かな町(クレーアタウン)。 他の国に比べて悪魔の被害が全くなく穏やかな田舎町である。 この町の人々は悪魔の被害にあわないせいか悪魔なんて噂話、犯罪者が増えただけだ。っというのがこの町の人たちの本音だった。 「ねぇ?そう思うでしょ、ミーナ?」 「え?あたし?」 友達の1人がいきなりミーナと呼ばれた大人しそうな女の子に聞いてみた。 しかし、 「あたしは…いると思うかな、悪魔?」 ミーナと呼ばれた女の子だけは他の子とは違う答えが出たのでその友達は反発した。 「はあ?なんでいると思うの?」 「え、なんでって言われても…その…だってさ、よくちっちゃい頃よく絵本で読んでもらってなかった?悪いことすると悪魔になるとか、あと夜に子供だけで遊んでたら悪魔に…」 「あははははは!!」 ミーナの子供のような発言に他の友達は大声で笑った。 「全くミーナは可愛いわね!そんなの大人が考えたおとぎ話に決まってるじゃん!」 「ほんと!そのあと王子様が悪い悪魔を正しい心でやっつけましたとさっ、ってやつでしょ?ちょーウケる終わり方じゃん!」 「やっぱミーナは面白いわ」 「でも悪魔は実際に…」 「はいはい、ミーナもういいよ。あー面白かった。ミーナのおかげで気分も良くなったしこれから遊びに行かない?」 「おお、いいねぇ。行こ行こ!」 「ミーナも行こ!」 「え、あ、うん!」 (悪魔は本当にいると思うんだけどなー。) ミーナの悪魔話によって気分が良くなりワイワイ騒ぎながらその場を去った。 「……………ふん。バカな女め。」 ミーナの友達が遊ぼうと言ってからかれこれ2時間。彼女達はというと今流行りのいうと(マジックファンタジー)と呼ばれたゲームで遊んでいた。 マジックファンタジーというのは魔法の箒を使って飛び、魔法で作られた異次元空間に飛んでるプログラムの敵を魔法の銃で撃ち落とすという現代のバ○オハ○○ドの様なものであった。 この世界の学生達にとても人気でミーナ達もこれにすごくハマっていた。 「ねえ、もう帰ろうよ。」 箒に乗ってるミーナが言った。 「えー、今良いとこなのに。」 「だって早く帰らないと親に怒られるしそれに夜は…」 「また悪魔でしょ?はいはい。みんな帰ろっか。」 そういうとその友達は箒から降りるとさっきまで飛んでた異次元空間からゲームセンターのようなところに戻った。 「はい、お疲れ様です!またのご利用お願いしますー。」 「じゃ、帰るとしますか!」 ミーナ達はすっかり暗くなった夜道を歩いて帰ろうとした。 店を出てからの帰り道は普段は明るくても夜になれば真っ暗にでほとんど前が見えない状態だった。 ミーナは怖がりなので隣の友達の腕を掴みながら横を歩いていた。 「ちょっとミーナ。くっつきすぎたら歩きにくいよ。」 「だってここ夜になると怖いんだもん。」 「相変わらずねミーナの怖がりは。」 「ねえねえ。今度ここでさ肝試ししない?」 「それいーね!ミーナ先頭でやろ!」 「む、無理無理無理無理無理~!ー!!!」 「あははは。」 夜の怖い道も友達といればこの時までは楽しく思えた。 そう、この時までは。 歩いて行くとその先には分かれ道がありさっきよりは少し明るめの場所がある。 そこまで行くと左の道から黒いスーツを来た男性が歩いてきて急に立ち止まってミーナ達を見つめていた。 「あれ、あの人誰だろう?」 「さあ?てかなんでこっち見てるんだろ?」 「まああんな人私らに関係ないし帰ろ。」 そういって男性の目線を無視して歩こうとした。 グチャッ ミーナの横で何か嫌な音が響いた。 「…え?」 男の手は友達の胸を貫き、友達はその場に倒れてしまった。 しかも男の手には何か赤黒い物体を持っていてそれが心臓といち早く気づいたのはミーナだった。 「あ、悪魔……」 「きゃぁぁぁぁああ!!」 他の2人の友達とミーナは大声を出して全速力でその場から走って逃げようとした。 しかし、全速力で逃げようとしても所詮はまだ子供の女の子。 男性の姿をした悪魔は逃げる友達に一瞬で追いつき首元を掴んだ。 「いや…やめて~!!」 そしてその友達の胸を貫き、さっきの友達の心臓と二つまとめて食べた。 「ジュル…ジュルジュルルル…」 心臓を食べる悪魔の姿を見て腰を抜かした友達はその場にへたり込んでしまい、地面を這いつくばりながら逃げようとした。 「ひっ…ひっ…ひっ…ひっ…」 這いつくばってるところを悪魔は手でガシッと足を掴んで自分のところまで引きずった。 「助けて!ミーナ……」 カブッ!ガブガブッ! 残されたミーナは友達の変わり果てた姿と今食べられてる友達を見て恐怖で震えていたが今がチャンスと思い走って逃げた。 「ハァ…ハァ……嫌だ、嫌だ!食べられるなんて嫌だ!」 この町では親は子供にこう言った。 「悪い子は悪魔に心臓食べられるぞ。」っと もちろん子供の躾の為に使っているだけで大人でさえ悪魔が本当に実在するとは思っていない。 ミーナは走って逃げるがさっきの場所とは違い道が暗くてミーナ自身何処を走っているか分からなくなった。 そして行き着いた場所は誰も使ってない昼間子供が遊ぶような空き地だった。 ここの空き地は誰の土地でもなくそれほど広くもないので誰もこの土地を買おうとせず殆どは近所のゴミ捨て場になっていた。 そのゴミ捨て場の中に倉庫が捨てられていていたのでミーナはその中に隠れた。 「ハァ、ハァ、…うぅ、みんな死んでしまった…本当に悪魔がいるなんて…」 ミーナは倉庫の中で落ち着きを取り戻したが殺された友達の姿が脳内にあらわれ、涙を流す。 「うぅ、お母さん。お父さん。…助けて…」 ガシャァン!! 「きゃっ!」 倉庫の隅っこで泣いているとミーナの横から獣のような手が倉庫の扉を貫き、無理やりその扉を外した。 「グルルルルル…」 「ひっ……」 「グルルル…人間…心臓…目…食わせ…ろ…」 悪魔はさっきと違い人間の男性の姿ではなく黒い狼のような化け物になっていた。 ミーナはその姿を見て泣いてるため呼吸ができず喋ることができなかった。 悪魔は爪でミーナを突き刺そうとしたがミーナは危機一髪その爪から逃れた。 そして爪の威力が強すぎたため倉庫に逃げ道が出来て、ミーナはそこから脱出した。 「逃るな…心臓…食ワセロ!」 「きゃぁぁぁ!」 悪魔は爪を伸ばしミーナを切り裂こうとした。 カキィィィン!! ミーナの目の前で剣が当たる音かした。 悪魔の爪はミーナの目の前で謎の黒いローブを纏った人が異様に大きい大剣でそれを防いでいた。 「何してんだ、夜遅くに女襲って楽しいか?」 「誰だ…その剣を…どけろ…」 悪魔は途切れ途切れの言葉で言うと腕に力を入れ爪で大剣を押し付けた。 ローブの男は押し付けてくるのを感じ大剣を上に挙げ、悪魔を吹き飛ばした。 「うっ…」 「俺に力で勝てると思うなよ、このクソ悪魔。お前らの様に人間を天敵とするやつがいれば…」 ローブの男が言い終わる前に悪魔は爪を立てていきなり襲ってきた。 グシャァ!! 「俺の様に、悪魔を天敵とするやつもいるんだよ。」 ローブの男は一瞬でも動揺することなく悪魔の首を大剣で斬りとばす。 悪魔は首を飛ばされ、身体は地面に倒れていく。 そしてローブの男は悪魔の胸を貫くと中から黒い物体を取り出しそれを食べた。 「ひぃぃ!」 「安心しろ、俺は悪魔じゃねえ。」 そう言ってローブの男は黒い物体を食べ続けた。 (な、なんなの…この人?あの恐ろしい悪魔をたった一瞬で) 「あの、…すみませんが…」 「何だ?」 「えっと…助けてくださって…ありがとうございました。」 「別に助けた覚えはねえ。これは俺の食事だからな。」 「そうだ、俺の主食は悪魔の心臓だからな。あと人間の心臓と。」 「ひぃっ!」 「大丈夫だ。俺は人間の心臓は食わない主義だ。」 そう言って彼は黒い物体を食べ終わると口の周りを舐めてその場を立ち去ろうとした。 「…あの、待ってください。その、私を家まで送って下さい!そこを真っ直ぐ行くだけでいいのでお願いします!」 「…俺の行き先もこっちだ。好きにしろ。」 ミーナはローブの男について行くことにしすっかり暗くなった道を2人で歩いた。 ローブの男はミーナと歩いてる間喋ることはなく常に無表情だった。 「うぅ…シェスカ…エミー…イルミ…」 「……」 ミーナは殺された友達を思い返し涙を拭きながら歩いていたが男は振り返りもせず黙々と歩く。 他人の感情など自分には関係ないといった感じだった。 しばらく歩いてるとようやくミーナの家に着いた。 「…着いたぞ。」 「あり…がど…ござ…い…ます…」 「いつまで泣いてる。…友達のことは忘れた方がいい。辛いだけだ。」 「忘れられる訳ないでしょ!」 ミーナは男の心無い返しに大声でいった。 「あなたさっきから何なの!?悪魔の心臓食べたり、私が悲しくて泣いても声ひとつかけない。おまけに殺された友達を忘れた方がいいですって?ふざけないでよ!あなたに何が分かるのよ!」 「どーしたのミーナ。夜中に大声出して。」 ミーナの大声で玄関から母親の声が聞こえてきて、はっと我にかえるミーナ。 「…そーだよな。人間は普通、簡単に人のこと忘れられる訳ないよな。悪かった…」 そう言い残し男は左手を前に出すと目の前の空間が広がり、彼はその中に入って姿を消した。 「魔法…使い…?…初めて見た。…だめ…なんか急に頭が…」 ミーナはそのまま意識を失ってしまった。「いつもありがとうね、リーナさん。」「いえいえ、私にはこれくらいの事しか出来ませんので。」カイルの家ではカイルの母親とミーナの母親であるリーナが、皆んなの食事を作って準備していた。クレーアタウンを悪魔に襲撃され、住む家が無くなったリーナは娘のミーナと一緒に居候させてもらっていた。(第34話参照)家族以外の人が増えるという事は家事をする者の負担が増えるという事だが、主婦としての家事スキルが高いリーナのお陰でカイルの母親は物凄く助かっていた。「リーナさんが居てくれるお陰で家事がだいぶ楽になったわ。」「それに、あなたが作る料理はどれも絶品で凄く美味しいからね。今日も頼りにしてるわよ!」「ありがとうございます、カルラさん。」カルラとはカイルの母親の名前である。2人はお互い歳が近い為、普段カイル達が居ない間に家事を早く済ませ、暇になってから色んな話に花を咲かせていた。確かにリーナの料理は作るもの全て絶品であったが、彼女は料理の腕をずっと磨き続けていた。その理由は、いつかアガレフが帰ってきた時に沢山料理を食べてもらう為であった。自分の料理が好きだと言ってくれた夫に、沢山自分の料理を食べてもらう為に。しかし、その願いは叶わなかったが今はその料理の腕が誰かの為に活かされており、それがリーナにとっても嬉しい事だった。そしてカイル達がノーム王のところから帰ってきた。「ただいま帰りました、母上!」カイルが帰ってきた為、玄関から自分が帰ってきたと伝える声が母達の居る部屋まで伝わってきた。廊下からバタバタと多くの足音が聞こえてくる。他にも一緒に暮らしているミーナとエミル、フィナ、ライク、ニケルも一緒に帰ってきたからだ。そして帰った6人は母たちの居る部屋にゾロゾロと入ってきた。「皆んなおかえりー!ご飯もう少しで出来るからね。」「ありがとうございます、カルラさん。私も手伝います。」「私もやります!」フィナが言うとエミルも便乗し、カルラ達の手伝いをしようとした。「ありがとうね。助かるわ、フィナさんにエミルちゃん。2人にはちょっとこのスープの味を見て良い感じに整えて欲しいの。」カルラは殆ど作っていたスープの最終調整をを2人に任せた。フィナとエミルは2人とも料理が得意である為、時間がある時などはカルラとリーナに手伝いを頼まれる事があった。しかし、
………ここは、どこだろう?気付いたらそこは真っ暗な空間にミーナはいた。「ここは…旅に出る前に見た夢の中みたい。夢の中のはずなのに夢じゃないみたいな…」そう。ここは初めてミーナが夢の中で優しい心を持つグレンと出会った場所であった。「ミーナ。」この声は?そう思ったミーナは声のする方を向いた。そこにはあの夢の中で初めて出会った黒髪のグレンが居た。「あなたは、あの時夢の中で会ったグレン?」そう質問すると、何故か黒髪のグレンは涙を流しながら言った。「…お願い…助けて欲しい。」そう言ってグレンは闇の中へと消えていく。「え、ちょっと待って!どこ行くの!…ねぇ!」ミーナは呼び止めたがグレンは何も言わずに消えていく。夢の中で走っていると何かにぶつかる様な衝撃が伝わった。「痛っ!」目の前で誰かにぶつかってしまったのか、ぶつけられた人は痛みを口にした。「…ハッ!…夢か……。」「…もぉ。夢か…じゃないわよ。何時だと思ってるの?」ミーナとぶつかったのは隣で寝ていたエミルであった。時刻は既に午前2時を過ぎており、起こされたエミルは滅茶苦茶不機嫌そうにミーナを睨みつけていた。「ご、ごめんねエミル。変な夢見てしまって…。」「もぉ……」そう言ってエミルは再び布団を被って眠りについた。「(今の夢、何だったんだろ?あの黒髪のグレンが現れたって事は、現実のグレンに何かあったんだろうか?)」「…ちょっと駄目だ…もう、眠い…。」少し考えたミーナであったが眠気には勝てなかった為、彼女もすぐに布団を被って眠りについた。ミーナ達はクレーアタウンでアスモディウスと戦ってから10日程の日が過ぎ去っていた。カイルはクレーアタウンで起きた悪魔との戦いで、カレンが悪魔サイドに居たことを西の大国イフリークの騎士団達に無線で伝えた。騎士団達の反応はそれぞれ違っていたが、全員悲しみに暮れていた。特にエバルフ。彼はカレンととても仲が良かった為、敵となったカレンを聞いて現実を受け止めきれずにいた。イフリークに残った12騎士長は5人4騎士長、ウェンディー・ソルディア5騎士長、シキ・ラインハルト6騎士長、エレンシー・ガーデン7騎士長、アレックス・マーベルそして12騎士長、エバルフ・シュロンこの5人はカイルから聞いたレミールに残った騎士長達の訃報を聞き、後日直接レミー
2人が見た通り、確かにヒスイはグロードを助けた。それは紛れもなくその場で起きた事実である。しかし、2人の記憶による事実と今こうして実際に起きたヒスイが刺された結果が矛盾している。何があったのか?それはベリエルの持つ虚無の魔眼の力が原因である。[あらゆる事象に対する再試行]これはその時に起こった場面を無かった事にし、再度その場面をやり直す事が出来る力。例えるなら、(殴られた→やり直し→殴られる前に戻る。)といった様に、実際起きた事を無かった事にし、起きる前に戻る事が出来る。言うなれば、時を巻き戻す力に近い力である。この力は虚無の魔眼を見せた相手にのみ発揮する。先程2人に虚無の魔眼を見せたのはこれを行う為であった。南の大国シルフで、カイルがハイド(ベリエル)に優勢だったがそれを一気に覆されたのも、この力が原因である。(第18話参照)そしてグロードが気がついた時にはヒスイは既にベリエルの黒い槍に突き刺されており、引き抜かれたと同時に後方へと倒れていく。「ヒスイ!!!!」ヒスイが倒れていく姿を見て叫ぶグロード。何故こうなったのか、考える余裕さえ無い。目の前で妻が刺された事に対する怒りがグロードの心を真っ赤に染め上げる。そしてグロードは空間移動でベリエルの元まで転移し、ベリエルの胸ぐらを掴む。「ぐっ!…」この時、何故かベリエルは虚無の魔眼を見せてこなかったが、この時はそんな事が気にならないくらい怒りの感情のみがグロードを突き動かしていた。怒りが爆発したグロードは胸ぐらを掴んで動けなくなったベリエルの顔面を拳で連打した。「うおおおおおお!!!!」ガスッ!ガスッ!ガスッ!ガスッ!……!何度殴っただろうか。何故か無抵抗のベリエルをグロードは怒りのままに殴り続けた。そして、右拳に魔力を込める。全属性を操れるグロードは、右拳に全属性の力を纏った。全属性とは、基本属性である8属性(火、水、風、雷、土、空間、光、闇)。これらを全て併用すると、相反する属性同士が互いを弾き合う。普通に使えば術者に影響が及ぶ危険な行為。しかしグロードは呪いにより死なない不死身の身体である為、その様なリスクが無い。無尽蔵に溢れ出る魔力を、右拳に纏った全属性の魔力へ更に加算する。魔力が増えれば弾き合う力も更に強化される。グロードはその強大すぎる力を全て、ベリ
ラウスが産まれてから5歳になった頃。未だグロードはベリエルを見つけられずにいた。その日は休日出勤で働きに出ていたヒスイの代わりに、グロードがラウスの世話をしていたのだった。「お父さん!」グロードの所まで走って近づくラウス。ラウスは髪色は母親譲りの綺麗な白銀であったが、顔はどちらかというと子供の頃のグロードに似て優しそうであった。「どうしたんだ、ラウス?」「この魔法書に書かれてるやつが分からないんだけど、教えて欲しい。」ラウスはどうやら魔法書を見ながら勉強しており、グロードは分からないところを教える為に一緒に見た。ーーこうしてると、ベリエルに勉強を教えてた頃を思い出す。一瞬ベリエルを思い出したが、すぐにその思い出を振り払った。「(いかん!ラウスはあいつとは違う!あいつはもう弟じゃ無い。憎むべき男なんだ。)」グロードは邪念を払う様にして、そう自分に言い聞かせた。「どうしたの?」「あっ…えっと、何でも無い!…ここが分からないんだな?」グロードはラウスが聞いてきた分からない部分を見て驚いた。「(…これは…高等魔法の専門書じゃ無いか。とても5歳が理解出来るレベルじゃ無いぞ。)」ラウスは魔法の理解力が異常に高く、それは紛れもなく10歳で実用性のある魔法を発明していったグロードの血筋であった。「ここはな、こうだから……。」噛み砕いて教えたつもりだがどうしても難しい専門用語を使う為、高校生でも理解が困難なレベルであった。しかし、ラウスは。「ありがとう!それだけ分からなかっただけだから!」 そう言ってラウスは専門書を持って部屋に戻って行った。ーーあの難解な本の一部分が分からなかっただけ?「…凄いな。流石は、俺の息子だな。」5歳にしては凄まじい魔法の才能を発揮するラウスに驚いていたが、自分の息子がこれ程の才能を持っている事に対して誇らしくなった。それから7歳になって少し身体が大きくなったラウスは体術の面でも凄まじい才能を発揮していた。「やああ!!」ラウスは殴る時に上記の様な子供っぽい掛け声を出すものの、それまでの動きが凄かった。グロードは手加減してるものの、まるで次に動き出す足の動きが見えているかの様にラウスは予測していた。その様子をヒスイはちゃんと見ていた。その夜、ラウスが寝静まった時にヒスイから話があった。「あの子、
月の遺跡から現れた古の化け物達が世界中を暴れ回った事により、多数の他国の人が亡くなったこの事件は世界中で瞬く間に広がった。現去流時(げざると)で生き返るのは、同じ種族の人間のみ。つまり、月の民が生き返った事により他国の人間は殺されて亡くなったままであった。これにより、今回の首謀者は今まで古の化け物達を野放しにし続けてきた月の民の責任だと言われ、これが更に月の民達への差別が助長される要因となった。この差別は風化される事が無く、時間と共に他国からの恨みばかりが募っていった。一方、古の化け物達を倒し世界の人々を救ったと持ち上げられたグロード。彼は世界の英雄として一躍有名人となった。沢山の人に賞賛され、感謝される日々。中にはグロードが古の化け物達を倒した事を記す為、絵物語を書きたいと懇願してきた絵師も居た。ーーもう、好きにしてくれ。投げやりに全てを受け入れるグロードは、ほとぼりが覚めるまで、人々の"英雄ごっこ"に付き合った。そして50年が経った頃には彼の事を知る者が死に去っていき、その頃にはもうグロードの事を英雄と呼ぶ者は居なくなっていた。50年も経てば時代の流れもそうだが、人々の価値観や文化も大きく変わっていく。しかし、変わらないものもあった。1つは月の民の差別。これはいつまで経っても、古の化け物達が世界中を暴れ回り、その生まれ変わりが現在の月の民だと後世に語り継がれていた。その為、実際古の化け物達が暴れた所を見た事がない後世の人々も、月の民が恐ろしい存在であるという価値観だけ植え付けられていた。そしてもう1つ変わらない事がある。これは50年経つ前から感じていた事だ。歳を取っていない。グロードは40歳の姿から変化が見られ無かったのだ。何故変化が無いのか?それはベリエルが掛けた呪いのせいであった。ベリエルはリオ王国の人達を超月食の日に自身の生命エネルギーに変換させ、それによってベリエルは不老不死となった。そんなベリエルに掛けられた呪いにはある条件があった。「この呪いは、術者が死ぬまで継続されるものである。」つまり、これはベリエルが死ぬまで呪いが解けないという事だ。不老不死になったベリエルは死なない為、呪いを掛けられたグロードとアガレフも必然的に不老不死となってしまった。これが、2人が400年間死ぬ事なく生き続けてきた理
それからもグロード、アガレフ、ベリエルは共にリオ王国で平和な日々を過ごしていった。グロードはあれから魔法の鍛錬を積んでいったが、時々月の遺跡へ出向いてアマルとサマスに修行を付けてもらう事が増えた。アガレフもグロードと一緒に月の遺跡へ出向き、修行を付けてもらっていたが彼には既に沢山の弟子が居た為、都合が合わない日が多かった。そしてベリエル。彼はこの頃になると部屋に閉じ篭もる事が増えた。理由は分からないが、何を聞いても調べ物をしてるだけだと言い、詳しい事はグロードとアガレフに教えようとしなかった。一度気になったグロードとアガレフはベリエルの部屋に行ってみた。扉の前でアガレフがグロードに言った。「ベリエルの奴、朝から部屋でずっと何かしてるみたいなんだが…どうも様子が変なんだ。」「ああ。確かに変だ。ベリエルがこの部屋に閉じ篭もってる間、一切の魔力を感じないからだ。」異変に気付いたのはグロードも同じであった。魔力を感じない。というよりも、まるでそこにベリエルが存在していない様に感じられた。気になったグロードはベリエルの部屋の扉をコンコンとノックした。数秒待っても反応は無く、静かなままであった。「…やはり様子が変だ。扉を開けるか?」「待て、アガレフ。流石に勝手に入るのは…。」すると目の前の扉がギィィッとゆっくり開く音が聞こえてくる。中からは相変わらずクマが酷いもののいつもの変わりない表情と姿、そして魔力のベリエルが出てきた。「…どうしたの、兄さん達?」何故か扉の前にグロードとアガレフが居た為、キョトンとした表情で2人を見ていたベリエル。「…いや、…何でもない。ずっと部屋に閉じ籠ってるから心配になってな。」「そ、そうだ。偶には、外に出て身体を動かしたらどうだ?」さっきまで魔力が感じられなかったベリエルはまるでそこに居ない様な気配であったが、突然その場に現れた様な気配に2人は驚く。しかし、一先ずベリエルに変わりがない事を確認して2人は安心した。「……んー、確かにそうだね。偶には身体を動かさないとね。…明日、久し振りに兄さん達に稽古を付けてもらおっかな!」グロードとアガレフにそう言われて頭を傾げ、少し考える様な間が気になるがすぐに笑顔になった。それを聞いたグロードとアガレフもベリエルに釣られて笑顔になった。「ああ。勿論だ。」「
その頃、カイルとエミルは別々の場所で悪魔の大群を相手にしていた。カイルは目の前から襲ってくる悪魔を見た。「目の前にはおよそ100体か。いや、この周囲の魔力を探ればそれ以上…」「面倒だ。纏めて一気にぶった斬る!」カイルは自身の影を直径10kmの範囲まで広げた。この3日間、魔力の流れを読む訓練をしていた為か、カイルの魔力操作の練度はかなり向上している。本来10kmまで影を広げてしまうと剣を振るっても影の端に居る敵に与えられる威力はかなり落ちてしまう。しかし魔力の流れを読める様になった今、カイルは見なくても相手の位置は勿論、身体の部位が隅々まで分かるレベルまで察知出来る様になっていた
これは愛を知らずに育ってきた男の話。彼はこれまでの人生の中で物心ついた頃から愛という物に触れる事なく生きてきた。ネル・ナイトフォース。彼は5歳まで北の大国の中心都市部にある貴族の家で奴隷として過ごしてきた。物心付く前から奴隷として仕えていたが、そこでは人権というものが存在しなかった。「おい、ゴミ!さっさとこの食器片付けろよ!」その屋敷の主である中年男は仕える奴隷に向けて済んだ食器を片付ける様に命令した。「…はい。」命令を受けて出てきたのは当時4歳のネル・ナイトフォースだった。彼は肌着同然の薄い半袖の服にヨレヨレのズボンを履いていた見窄(みすぼ)らしい少年だった。身体を洗わせ
アガレフは家の前で見送ってくれるリーナと、彼女に抱き抱えられているミーナの方を見た。 あの赤ん坊の頃に比べると少し大きくなったミーナ。金髪で青い瞳に綺麗な顔立ちが、どことなく母親であるリーナに似てきた気がした。 「じゃあ、行ってくる。」 「…うん。ずっと、待ってるからね。」 そう言ってアガレフとリーナは最後の口付けをした。 そして最後にミーナの方を見た。 「おとー。おとー。」 手を伸ばしながらお父さんと呼ぼうとしてるミーナ。その純粋無垢な瞳には、今日を最後に会えなくなるなんて微塵も思っていないのが分かる。 アガレフはミーナの額に手を当て、撫でながら言った。 「ミーナ。これか
「ハァ、ハァ!カイル君、どこ行ったんだろ?」王宮へ走りながらカイルを探していたフィナ。死力を尽くして国を守った人が突然姿を消し、その安否が気になり気付いたら王宮の方へ走っていた。王宮までの距離は長く、近づくにつれ擬似・ブラックホールによる被害が大きくなっている。その悲惨な光景を見る度に胸が締め付けられる。「(ここの花屋さん、いつも店の人がニコニコしながら花の事教えてくれてたな…部屋に赤い椿を飾ったな。…あっちのパン屋さんではよく巡回してた時、こっそり買って食べてたな。)」そう考えてると悲しくなり、更に目から涙が溢れていく。何で、こんな事になったんだろ…幸せだった筈なのに。そし







