LOGIN10年後、人々は悲劇の国キュアリーハートをこう呼んだ。
赤い地獄(レッドヘル)と。 今では化け物が住処としているらしく人間の立ち入りを禁止した。 化け物は人間の心臓と目が好きらしくそれを取って食べるので人は化け物の事をまるで悪魔のようだと言う。 そして人間の心臓を求めて他の国へ移動する悪魔もいる。 しかしこの世にはそんな悪魔に対抗する力があり、それを人々はこう呼んだ。 ー悪魔祓い(デビルブレイカー)と。 「ねぇ、聞いた?隣の国でまた悪魔の被害があったらしいわよ?」 「またなの?もう何度目なの?」 「ほんと、いい加減やめてほしいよねー。どうせ悪魔なんて噂話でしょ?」 学校帰りの女子高生たち。 ここはあのレッドヘルからかなり東の方に離れた静かな町(クレーアタウン)。 他の国に比べて悪魔の被害が全くなく穏やかな田舎町である。 この町の人々は悪魔の被害にあわないせいか悪魔なんて噂話、犯罪者が増えただけだ。っというのがこの町の人たちの本音だった。 「ねぇ?そう思うでしょ、ミーナ?」 「え?あたし?」 友達の1人がいきなりミーナと呼ばれた大人しそうな女の子に聞いてみた。 しかし、 「あたしは…いると思うかな、悪魔?」 ミーナと呼ばれた女の子だけは他の子とは違う答えが出たのでその友達は反発した。 「はあ?なんでいると思うの?」 「え、なんでって言われても…その…だってさ、よくちっちゃい頃よく絵本で読んでもらってなかった?悪いことすると悪魔になるとか、あと夜に子供だけで遊んでたら悪魔に…」 「あははははは!!」 ミーナの子供のような発言に他の友達は大声で笑った。 「全くミーナは可愛いわね!そんなの大人が考えたおとぎ話に決まってるじゃん!」 「ほんと!そのあと王子様が悪い悪魔を正しい心でやっつけましたとさっ、ってやつでしょ?ちょーウケる終わり方じゃん!」 「やっぱミーナは面白いわ」 「でも悪魔は実際に…」 「はいはい、ミーナもういいよ。あー面白かった。ミーナのおかげで気分も良くなったしこれから遊びに行かない?」 「おお、いいねぇ。行こ行こ!」 「ミーナも行こ!」 「え、あ、うん!」 (悪魔は本当にいると思うんだけどなー。) ミーナの悪魔話によって気分が良くなりワイワイ騒ぎながらその場を去った。 「……………ふん。バカな女め。」 ミーナの友達が遊ぼうと言ってからかれこれ2時間。彼女達はというと今流行りのいうと(マジックファンタジー)と呼ばれたゲームで遊んでいた。 マジックファンタジーというのは魔法の箒を使って飛び、魔法で作られた異次元空間に飛んでるプログラムの敵を魔法の銃で撃ち落とすという現代のバ○オハ○○ドの様なものであった。 この世界の学生達にとても人気でミーナ達もこれにすごくハマっていた。 「ねえ、もう帰ろうよ。」 箒に乗ってるミーナが言った。 「えー、今良いとこなのに。」 「だって早く帰らないと親に怒られるしそれに夜は…」 「また悪魔でしょ?はいはい。みんな帰ろっか。」 そういうとその友達は箒から降りるとさっきまで飛んでた異次元空間からゲームセンターのようなところに戻った。 「はい、お疲れ様です!またのご利用お願いしますー。」 「じゃ、帰るとしますか!」 ミーナ達はすっかり暗くなった夜道を歩いて帰ろうとした。 店を出てからの帰り道は普段は明るくても夜になれば真っ暗にでほとんど前が見えない状態だった。 ミーナは怖がりなので隣の友達の腕を掴みながら横を歩いていた。 「ちょっとミーナ。くっつきすぎたら歩きにくいよ。」 「だってここ夜になると怖いんだもん。」 「相変わらずねミーナの怖がりは。」 「ねえねえ。今度ここでさ肝試ししない?」 「それいーね!ミーナ先頭でやろ!」 「む、無理無理無理無理無理~!ー!!!」 「あははは。」 夜の怖い道も友達といればこの時までは楽しく思えた。 そう、この時までは。 歩いて行くとその先には分かれ道がありさっきよりは少し明るめの場所がある。 そこまで行くと左の道から黒いスーツを来た男性が歩いてきて急に立ち止まってミーナ達を見つめていた。 「あれ、あの人誰だろう?」 「さあ?てかなんでこっち見てるんだろ?」 「まああんな人私らに関係ないし帰ろ。」 そういって男性の目線を無視して歩こうとした。 グチャッ ミーナの横で何か嫌な音が響いた。 「…え?」 男の手は友達の胸を貫き、友達はその場に倒れてしまった。 しかも男の手には何か赤黒い物体を持っていてそれが心臓といち早く気づいたのはミーナだった。 「あ、悪魔……」 「きゃぁぁぁぁああ!!」 他の2人の友達とミーナは大声を出して全速力でその場から走って逃げようとした。 しかし、全速力で逃げようとしても所詮はまだ子供の女の子。 男性の姿をした悪魔は逃げる友達に一瞬で追いつき首元を掴んだ。 「いや…やめて~!!」 そしてその友達の胸を貫き、さっきの友達の心臓と二つまとめて食べた。 「ジュル…ジュルジュルルル…」 心臓を食べる悪魔の姿を見て腰を抜かした友達はその場にへたり込んでしまい、地面を這いつくばりながら逃げようとした。 「ひっ…ひっ…ひっ…ひっ…」 這いつくばってるところを悪魔は手でガシッと足を掴んで自分のところまで引きずった。 「助けて!ミーナ……」 カブッ!ガブガブッ! 残されたミーナは友達の変わり果てた姿と今食べられてる友達を見て恐怖で震えていたが今がチャンスと思い走って逃げた。 「ハァ…ハァ……嫌だ、嫌だ!食べられるなんて嫌だ!」 この町では親は子供にこう言った。 「悪い子は悪魔に心臓食べられるぞ。」っと もちろん子供の躾の為に使っているだけで大人でさえ悪魔が本当に実在するとは思っていない。 ミーナは走って逃げるがさっきの場所とは違い道が暗くてミーナ自身何処を走っているか分からなくなった。 そして行き着いた場所は誰も使ってない昼間子供が遊ぶような空き地だった。 ここの空き地は誰の土地でもなくそれほど広くもないので誰もこの土地を買おうとせず殆どは近所のゴミ捨て場になっていた。 そのゴミ捨て場の中に倉庫が捨てられていていたのでミーナはその中に隠れた。 「ハァ、ハァ、…うぅ、みんな死んでしまった…本当に悪魔がいるなんて…」 ミーナは倉庫の中で落ち着きを取り戻したが殺された友達の姿が脳内にあらわれ、涙を流す。 「うぅ、お母さん。お父さん。…助けて…」 ガシャァン!! 「きゃっ!」 倉庫の隅っこで泣いているとミーナの横から獣のような手が倉庫の扉を貫き、無理やりその扉を外した。 「グルルルルル…」 「ひっ……」 「グルルル…人間…心臓…目…食わせ…ろ…」 悪魔はさっきと違い人間の男性の姿ではなく黒い狼のような化け物になっていた。 ミーナはその姿を見て泣いてるため呼吸ができず喋ることができなかった。 悪魔は爪でミーナを突き刺そうとしたがミーナは危機一髪その爪から逃れた。 そして爪の威力が強すぎたため倉庫に逃げ道が出来て、ミーナはそこから脱出した。 「逃るな…心臓…食ワセロ!」 「きゃぁぁぁ!」 悪魔は爪を伸ばしミーナを切り裂こうとした。 カキィィィン!! ミーナの目の前で剣が当たる音かした。 悪魔の爪はミーナの目の前で謎の黒いローブを纏った人が異様に大きい大剣でそれを防いでいた。 「何してんだ、夜遅くに女襲って楽しいか?」 「誰だ…その剣を…どけろ…」 悪魔は途切れ途切れの言葉で言うと腕に力を入れ爪で大剣を押し付けた。 ローブの男は押し付けてくるのを感じ大剣を上に挙げ、悪魔を吹き飛ばした。 「うっ…」 「俺に力で勝てると思うなよ、このクソ悪魔。お前らの様に人間を天敵とするやつがいれば…」 ローブの男が言い終わる前に悪魔は爪を立てていきなり襲ってきた。 グシャァ!! 「俺の様に、悪魔を天敵とするやつもいるんだよ。」 ローブの男は一瞬でも動揺することなく悪魔の首を大剣で斬りとばす。 悪魔は首を飛ばされ、身体は地面に倒れていく。 そしてローブの男は悪魔の胸を貫くと中から黒い物体を取り出しそれを食べた。 「ひぃぃ!」 「安心しろ、俺は悪魔じゃねえ。」 そう言ってローブの男は黒い物体を食べ続けた。 (な、なんなの…この人?あの恐ろしい悪魔をたった一瞬で) 「あの、…すみませんが…」 「何だ?」 「えっと…助けてくださって…ありがとうございました。」 「別に助けた覚えはねえ。これは俺の食事だからな。」 「そうだ、俺の主食は悪魔の心臓だからな。あと人間の心臓と。」 「ひぃっ!」 「大丈夫だ。俺は人間の心臓は食わない主義だ。」 そう言って彼は黒い物体を食べ終わると口の周りを舐めてその場を立ち去ろうとした。 「…あの、待ってください。その、私を家まで送って下さい!そこを真っ直ぐ行くだけでいいのでお願いします!」 「…俺の行き先もこっちだ。好きにしろ。」 ミーナはローブの男について行くことにしすっかり暗くなった道を2人で歩いた。 ローブの男はミーナと歩いてる間喋ることはなく常に無表情だった。 「うぅ…シェスカ…エミー…イルミ…」 「……」 ミーナは殺された友達を思い返し涙を拭きながら歩いていたが男は振り返りもせず黙々と歩く。 他人の感情など自分には関係ないといった感じだった。 しばらく歩いてるとようやくミーナの家に着いた。 「…着いたぞ。」 「あり…がど…ござ…い…ます…」 「いつまで泣いてる。…友達のことは忘れた方がいい。辛いだけだ。」 「忘れられる訳ないでしょ!」 ミーナは男の心無い返しに大声でいった。 「あなたさっきから何なの!?悪魔の心臓食べたり、私が悲しくて泣いても声ひとつかけない。おまけに殺された友達を忘れた方がいいですって?ふざけないでよ!あなたに何が分かるのよ!」 「どーしたのミーナ。夜中に大声出して。」 ミーナの大声で玄関から母親の声が聞こえてきて、はっと我にかえるミーナ。 「…そーだよな。人間は普通、簡単に人のこと忘れられる訳ないよな。悪かった…」 そう言い残し男は左手を前に出すと目の前の空間が広がり、彼はその中に入って姿を消した。 「魔法…使い…?…初めて見た。…だめ…なんか急に頭が…」 ミーナはそのまま意識を失ってしまった。宝石店を出てからミーナはカレンに案内されながら色んな店に寄り、手には買った服や旅に必要な生活必需品などが入った袋を持っている。重くなった荷物を持っているミーナを見て微笑ましく思ったカレン。笑いながらミーナに声をかけた。「うふふ、いっぱい買い物できて良かったね。ミーナちゃん。」「はい!本当にありがとうございます、カレンさん。」「いいのよ。仕事の休みは私1人で買い物してるからあなたみたいな女の子と買い物できて楽しかったわ。」「えへへっ。そういえばカレンさんは何の仕事してるんですか?」「私?私は……」「おーい、カレーン!」カレンが答えようとした時、2人の後ろの方からカレンを呼ぶ声が聞こえてきた。誰だろうと振り返ると手を振りながらやってくるのは男の人だった。一瞬彼氏かなと思うミーナだが数秒後その人が誰なのか一瞬で分かった。その人とは。「え、エバルフさん!?」この人はこの前までグレンを殺そうとしていた騎士団の1人のエバルフさんだった。向こうもミーナとカレンが一緒にいる事に驚いていた。「君は、紅の悪魔祓いと一緒にいたお嬢ちゃんじゃないか!?なぜカレンと?」「あら、あなた達2人とも知り合いだったの?」「ああ。この子はこの前団長に報告した悪魔祓いと一緒に旅してる子だ。…この子がいるって事はまさかこの国に紅の悪魔祓いがいるのか?」ミーナを見てグレンの事を思い出したエバルフ。焦っているのか額から汗が流れ落ちていた。それに気づいたミーナはエバルフを気遣うように返した。「大丈夫ですよ。この国に来てからグレンと私は別々に行動してるますから。」「ホッ……そうかそうか。じゃああいつは今いないんだね?」一瞬だけ安心したため息を吐くエバルフを見てカレンは笑いながら馬鹿にするように。「あはははっ!何ビビってるのよ。ほんっとに情けないわねぇ。」「うっ、うるさい!お前はあの化け物を見てないからそう言えるんだ!」「あんたと一緒にしないで欲しいわね。どんな敵がいても私は負けずに挑むわ。あんたと違ってね!」「何だとー!」2人が言い争ってるとそこに割り込むようにミーナが口を出した。「あのー。カレンさんの仕事ってもしかして…魔法騎士団の騎士ですか?」「ええ、そうよ。ちなみに私は10騎士長でこの人(エバルフ)よりも上の位よ。」指を差しながらエバルフを見
あれから数日後、グレンとミーナは旅を続けようやく大国イフリークに到着した。 この世界には東西南北の四つの大国がありここは西の大国で他の4つの国に比べると魔法を主とした文化が発展していた。 「わぁ~!みてグレン!建物があんなにも大きいよ!」 初めて見る都会の建物が珍しいのかミーナのテンションはいつも以上に高かった。 そんなミーナにグレンは呆れた様にため息をついた。 「…さっさとこっちこい。入国の手続きするぞ。」 この国では他国からのテロの防止の為か入国する際に身元と持ち物点検を兼ねた手続きが数カ所ある国の出入り口で行われていた。 もちろん勝手に不法入国すれば国中に警報が鳴り渡りこの国の守護神である魔法騎士団が一斉に出動する事態になり、問答無用で逮捕される。 魔法騎士団の強さは常人を遥かに凌ぐ存在と知っているためかこの国では犯罪件数はほぼ0に近かった。 グレンは入り口まで行くと係りの人に自身のパスポートを出してくださいと言われた。 「おい、お前のパスポートも出せ。この国ではお前の分も必要なんだよ。」 「ちょっ、ちょっと待って…えーっと…」 ミーナは自分の整理整頓されていない鞄をあさりだすが中々パスポートが見つからないためグレンは眉をピクピク震わせていた。 「なんだその汚い鞄は…ったく。すまんが俺のだけでも大丈夫か?急いでるんで。」 グレンは見るに見かねたのか係りの人に自分のだけでいいかたずねた。 「分かりました。今回は特別に1人だけのパスポートのみで入国を許可しましょう。ではこちらをお通り下さい。」 係りの人に案内されるとグレンはそのまま通過するがミーナはまだ鞄の中からパスポートを出そうと探しながら歩いた。 「あーー!!!」 するとミーナは急に大声を出したのでグレンと周りにいる他の人たちは全員こっちを振り返った。 「ど、どうした!?」 「見つかった…」 「え?」 「良かった~!パスポート見つかって。」 どーやらミーナは汚い鞄の中からパスポートを今頃見つけ出して喜んでいた。 グレンとその場にいる人全員はこれを見て同時にこう思った。 「(ややこしいからやめろって。)」 2人は入国を許可されたのでこの国の入り口を通り、大通りに出た。 その通りには普通の町では買えない木の
今からおよそ10年前、ある国の悲劇によって世界中を恐怖させた。 その国は、赤い地獄ーレッドヘル。 昔は世界で一番平和で活気のある国だったが10年前の事件によって人はこの国に立ち入る事を禁止された。 そう、人はいない。 昔の事件の影響によって太陽は隠れこの国は年中黒い雲に覆われ冷たい風が街を吹き抜ける。 レッドヘルの中心部には一つだけ壊れていない小さめの建造物があり、その建造物はこの国の地下に繋がっている。 その地下には世間には知られていない場所があった。 地下の悪魔の住処ー通称(悪魔界) そこにはたくさんの悪魔が生存していて地下には建物や店が出回っていた。 そこにも人間と同じようにトップの悪魔が存在しその者達が集う場所があった。 その部屋には10人程度の悪魔達が椅子に座っていてそのうちの1人の男が言った。 「おい、聞いたかよ?あのロフィスがやられたらしいぞ?」 その男は逆立った黒髪に目がつり上がっている悪魔だった。 その発言に今度は手足の細いスタイリッシュな体型に金の長髪にウェーブが掛かった大人女性が返答した。 「らしいわね。あの予知能力は私達にはない存在だったから結構便利だっだのに…残念だわ。」 その女性はロフィスではなく、ロフィスの能力にしか興味がないようだった。 「なに呑気な事言ってやがんだ。ロフィスが殺られたって事はよぉ、あの悪魔祓いとか言う人間に負けたってことだろーが!」 逆立った髪の男が金髪の女性を睨みつけ怒鳴った。 それに対して女性はクスッと笑い。 「全く、まだまだ可愛い"憤怒"ね。まるで怒鳴るのがカッコ良いと思ってるような学生の反抗期のようね。」 「うっせーな"色欲"のくそババァ。てめえみてえなバカ女は男のケツでも追っかけてろ!」 憤怒と言われた男は凄みを利かしながら言った。 すると女性から笑顔は消え、無表情の顔になった。 ガタァンッ!! 「……は?あんた喧嘩売ってんの?」 椅子から立ち上がると黒いオーラが体の周りから発生し、それを見て憤怒の男が下品に笑いながら挑発する。 「ハッ!やるなら掛かって来いよ!このブスが!」 「このガキ……一回死ななきゃ分かんないのかな…?」 2人が攻撃態勢に入ろうとしたその時。 バァァァン!!! 机を思
「…ふわぁーーー…今日はなんだか疲れたなー。」 眠さで大きなあくびをするミーナ。 ロフィスの一件の後、グレンとミーナは町の外れにある綺麗な水辺の近くに寝泊まりすることにした。 「けどグレンの空間能力はすごいね。なんでも収納可能じゃん。」 テントや寝泊まりするために必要な道具はグレンの空間能力のポケットから引き出した。 「…そういや、エバルフさんが言ってた事ってほんとかな?」 ミーナはエバルフ達と別れる際に、エバルフからこんな事を聞いた。 昼間 ロフィスを倒した後、エバルフ達はグレン達の方に向かって一列に整列した。 「今回の件に関しては、紅の悪魔祓いの協力で獄魔の討伐に見事成功した。感謝する。それと、お嬢ちゃん。…ありがとう、君のおかげで騎士団の誇りを思い出せた。」 「全隊、礼!!」 そしてエバルフの号令でエバルフと部下達は全員揃って頭を下げた。 「俺を捕まえなくていいのか?ずっと狙ってたんだろ?」 「まさか、今日俺たちの命を守ってくれた恩人を捕まえるわけないだろう。…では、俺は今日の事を騎士団の団長に報告しなければならんからここで失礼する。」 エバルフ達は去ろうとしたがエバルフは最後に振り返ってからこう言った。 「一応言うが団長には気をつけろよ。あの方はお前みたいな強い奴と戦うのが好きだから会えば必ず戦いになる。そうなったら流石のお前も命はないぞ。」 それを最後に言い残し、部下を引き連れて去っていった。 「………命はないぞ…っていう事はグレンより強いのかな?」 悪魔を余裕で倒すグレンに勝つかもしれない人なんて相当強いに決まってる。 「だとしたらグレンとその団長は近づけてはいけないわ。…そういえばグレンは裏で何してるんだろ?」 ミーナはその事を伝えるためにテントの裏に顔を出してみた。 そこには何やら坐禅を組みながら目を瞑り、魔法書のような物を開いていた。 その周りを囲む様に黒い魔法陣が地面に展開され、そこでひたすら呪文のような物をブツブツと唱えていた。 ミーナはよく聞き取れないので気づかれないようにそーっと近づいて聞いた。 「(何だろう…?こんなに近くで聞いてるのに何言ってるのかさっぱり…)」 ミーナはここで邪魔するのもグレンに悪いと思ったのか終わるまでそばで待つ事にし
「エバルフさんの悪魔化が…解けたぞー!」 「「うぉぉぉ!!でかしたぞお嬢ちゃん!!」」 エバルフの悪魔化が解けたことで部下たちは喜び叫んだ。 グレンはミーナがエバルフの悪魔化を止めれた事を未だ信じられないのか唖然としていた。 「信じられんな…ただの人間が悪魔化を阻止するなど…」 (まったくだ…てめえですら悪魔化を阻止できた事ねえのによぉ) グレンの悪魔もグレンと同じくミーナの行動を感心した。 「…何てことだ…あの人間の悪魔化を…」 悔しそうな顔をしながらブツブツ独り言のように喋るロフィス。 そして一気に顔の表情を強面に変えて。 「よくも俺達の計画を…3年かけたこの計画を無駄にしやがったな…許さん…許さんぞぉぉぉ!人間どもぉぉぉ!!!」 ロフィスの声の大きさに全員再び戦闘体制に入ろうとした時。 「…!?…ガァッ!…」 ロフィスの指先から出た一筋の光線がエバルフの胸を貫き、エバルフの体は地面に倒れこんだ。 「エバルフさん!おい、ロフィス!いい加減にしろてめぇ!」 「いい加減にしろだと?こっちのセリフだクソ人間…。3年だぞ…こいつを悪魔化させんのにどれだけ苦労したか…許さんぞ。お前ら全員皆殺しにしてやるよ!」 ロフィスの腕と顔が変形し始めた。 黒い体は普通の悪魔と同じだがロフィスの変異は普通の悪魔と違い人間の面影を残したまま腕と顔が黒く変異し、髪は茶髪のままだった。 「あの人も悪魔の姿に…」 「落ち着けミーナ。危険だから後ろにいてろ。」 その姿があの時のシェスカと重なって見えたのかミーナは怯えていたがグレンに言われてエバルフの部下達の所に移動した。 そしてグレンはロフィスの方に再び顔を向け。 「…とうとう本性を表したな…」 「殺してやるよ…この姿にさせた事、後悔するがいい!」 まず最初に動いたのはロフィスだった。 ロフィスの怒りは極限状態なのが周りにも伝わってきて戦ってもいない部下達の何人かは反射的に一歩下がった。 ロフィスの拳がグレンの顔面を狙ってくるとグレンは大剣の剣脊でそれを受け止めた。 キィィィン!!! 金属同士がぶつかる音が鳴り響く。 「(こいつの拳は金属類に匹敵するのか!?大剣でガードしたのにビクともしねぇ!)」 しかしロフィスはグレンに考え
「お兄ちゃん!助けてー!」 「待ってろ!すぐ助ける!…くそっ、騎士団より悪魔が多すぎる…」 理由は分からないが突如現れた悪魔の大群は町に現れ、たくさんの人々を殺戮していた。 俺はちょうど騎士団の仕事でこの町にいたので仲間と共に悪魔に対抗していた。 大半の悪魔は倒したはずなのだがどういう訳か悪魔は増える一方でエバルフ達は苦戦していた。 その目の前には妹が悪魔に取り囲まれていた。 「エバルフさん!悪魔が多すぎて我々じゃとても…」 「くそっ、団長がいればいいんだが今あの人は他の任務だからな。どうすれば…」 エバルフが悩んでると妹を囲んでいた悪魔が妹を切り刻もうと爪を振り下ろしたその時。 グサッ… 何かが斬られた音がした。 これは妹が斬られた音ではなく、悪魔が斬られた音でその悪魔は斬られた背中を押さえながら倒れてしまった。 悪魔を斬ったのは黒いローブを身にまとっていて顔はフードを被っていたのでよく見えないがどことなくグレンに似ていた。 周りにいた悪魔は仲間が斬られた事によってこのローブの男を敵と判断した。 そして爪を伸ばして襲いかかった。 しかし、その男は目に見えない速さで悪魔を斬りまくっていった。 そして男が目で判断できる速さになった時には悪魔達の体から切り傷が出てきて血を吹き出しながら倒れた。 それを見たエバルフは妹が助かったと思ってホッとした。 「よかった。妹は無事に助かっ…」 エバルフは目の前の状況を理解するのに少し遅れたがそれに気づいた時彼は狂ったように発狂した。 「ウワァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」 そこには悪魔の死体の中に妹の死体まで混じっていたからだ。 「お気を確かに、エバルフさん!…なんて事を…」 横にいた部下の男はエバルフの妹を見てから黒いローブの男を睨みつけた。 黒いローブの男は悪魔と一緒に妹まで斬ったのだ。 しかし、謝罪もせずにその場を立ち去ろうとした。 「…待てよ。」 エバルフはうつむいているが地面につけた手からは怒りで震えているのがわかった。 立ち去ろうとするローブの男を呼び止めたると男は言った。 「…何を怒っている?俺の射程距離にコレがいただけだ。運が悪い。」 「な…に…」 「そんな睨むな。助けれなかったのは