Masuk10年後、人々は悲劇の国キュアリーハートをこう呼んだ。
赤い地獄(レッドヘル)と。 今では化け物が住処としているらしく人間の立ち入りを禁止した。 化け物は人間の心臓と目が好きらしくそれを取って食べるので人は化け物の事をまるで悪魔のようだと言う。 そして人間の心臓を求めて他の国へ移動する悪魔もいる。 しかしこの世にはそんな悪魔に対抗する力があり、それを人々はこう呼んだ。 ー悪魔祓い(デビルブレイカー)と。 「ねぇ、聞いた?隣の国でまた悪魔の被害があったらしいわよ?」 「またなの?もう何度目なの?」 「ほんと、いい加減やめてほしいよねー。どうせ悪魔なんて噂話でしょ?」 学校帰りの女子高生たち。 ここはあのレッドヘルからかなり東の方に離れた静かな町(クレーアタウン)。 他の国に比べて悪魔の被害が全くなく穏やかな田舎町である。 この町の人々は悪魔の被害にあわないせいか悪魔なんて噂話、犯罪者が増えただけだ。っというのがこの町の人たちの本音だった。 「ねぇ?そう思うでしょ、ミーナ?」 「え?あたし?」 友達の1人がいきなりミーナと呼ばれた大人しそうな女の子に聞いてみた。 しかし、 「あたしは…いると思うかな、悪魔?」 ミーナと呼ばれた女の子だけは他の子とは違う答えが出たのでその友達は反発した。 「はあ?なんでいると思うの?」 「え、なんでって言われても…その…だってさ、よくちっちゃい頃よく絵本で読んでもらってなかった?悪いことすると悪魔になるとか、あと夜に子供だけで遊んでたら悪魔に…」 「あははははは!!」 ミーナの子供のような発言に他の友達は大声で笑った。 「全くミーナは可愛いわね!そんなの大人が考えたおとぎ話に決まってるじゃん!」 「ほんと!そのあと王子様が悪い悪魔を正しい心でやっつけましたとさっ、ってやつでしょ?ちょーウケる終わり方じゃん!」 「やっぱミーナは面白いわ」 「でも悪魔は実際に…」 「はいはい、ミーナもういいよ。あー面白かった。ミーナのおかげで気分も良くなったしこれから遊びに行かない?」 「おお、いいねぇ。行こ行こ!」 「ミーナも行こ!」 「え、あ、うん!」 (悪魔は本当にいると思うんだけどなー。) ミーナの悪魔話によって気分が良くなりワイワイ騒ぎながらその場を去った。 「……………ふん。バカな女め。」 ミーナの友達が遊ぼうと言ってからかれこれ2時間。彼女達はというと今流行りのいうと(マジックファンタジー)と呼ばれたゲームで遊んでいた。 マジックファンタジーというのは魔法の箒を使って飛び、魔法で作られた異次元空間に飛んでるプログラムの敵を魔法の銃で撃ち落とすという現代のバ○オハ○○ドの様なものであった。 この世界の学生達にとても人気でミーナ達もこれにすごくハマっていた。 「ねえ、もう帰ろうよ。」 箒に乗ってるミーナが言った。 「えー、今良いとこなのに。」 「だって早く帰らないと親に怒られるしそれに夜は…」 「また悪魔でしょ?はいはい。みんな帰ろっか。」 そういうとその友達は箒から降りるとさっきまで飛んでた異次元空間からゲームセンターのようなところに戻った。 「はい、お疲れ様です!またのご利用お願いしますー。」 「じゃ、帰るとしますか!」 ミーナ達はすっかり暗くなった夜道を歩いて帰ろうとした。 店を出てからの帰り道は普段は明るくても夜になれば真っ暗にでほとんど前が見えない状態だった。 ミーナは怖がりなので隣の友達の腕を掴みながら横を歩いていた。 「ちょっとミーナ。くっつきすぎたら歩きにくいよ。」 「だってここ夜になると怖いんだもん。」 「相変わらずねミーナの怖がりは。」 「ねえねえ。今度ここでさ肝試ししない?」 「それいーね!ミーナ先頭でやろ!」 「む、無理無理無理無理無理~!ー!!!」 「あははは。」 夜の怖い道も友達といればこの時までは楽しく思えた。 そう、この時までは。 歩いて行くとその先には分かれ道がありさっきよりは少し明るめの場所がある。 そこまで行くと左の道から黒いスーツを来た男性が歩いてきて急に立ち止まってミーナ達を見つめていた。 「あれ、あの人誰だろう?」 「さあ?てかなんでこっち見てるんだろ?」 「まああんな人私らに関係ないし帰ろ。」 そういって男性の目線を無視して歩こうとした。 グチャッ ミーナの横で何か嫌な音が響いた。 「…え?」 男の手は友達の胸を貫き、友達はその場に倒れてしまった。 しかも男の手には何か赤黒い物体を持っていてそれが心臓といち早く気づいたのはミーナだった。 「あ、悪魔……」 「きゃぁぁぁぁああ!!」 他の2人の友達とミーナは大声を出して全速力でその場から走って逃げようとした。 しかし、全速力で逃げようとしても所詮はまだ子供の女の子。 男性の姿をした悪魔は逃げる友達に一瞬で追いつき首元を掴んだ。 「いや…やめて~!!」 そしてその友達の胸を貫き、さっきの友達の心臓と二つまとめて食べた。 「ジュル…ジュルジュルルル…」 心臓を食べる悪魔の姿を見て腰を抜かした友達はその場にへたり込んでしまい、地面を這いつくばりながら逃げようとした。 「ひっ…ひっ…ひっ…ひっ…」 這いつくばってるところを悪魔は手でガシッと足を掴んで自分のところまで引きずった。 「助けて!ミーナ……」 カブッ!ガブガブッ! 残されたミーナは友達の変わり果てた姿と今食べられてる友達を見て恐怖で震えていたが今がチャンスと思い走って逃げた。 「ハァ…ハァ……嫌だ、嫌だ!食べられるなんて嫌だ!」 この町では親は子供にこう言った。 「悪い子は悪魔に心臓食べられるぞ。」っと もちろん子供の躾の為に使っているだけで大人でさえ悪魔が本当に実在するとは思っていない。 ミーナは走って逃げるがさっきの場所とは違い道が暗くてミーナ自身何処を走っているか分からなくなった。 そして行き着いた場所は誰も使ってない昼間子供が遊ぶような空き地だった。 ここの空き地は誰の土地でもなくそれほど広くもないので誰もこの土地を買おうとせず殆どは近所のゴミ捨て場になっていた。 そのゴミ捨て場の中に倉庫が捨てられていていたのでミーナはその中に隠れた。 「ハァ、ハァ、…うぅ、みんな死んでしまった…本当に悪魔がいるなんて…」 ミーナは倉庫の中で落ち着きを取り戻したが殺された友達の姿が脳内にあらわれ、涙を流す。 「うぅ、お母さん。お父さん。…助けて…」 ガシャァン!! 「きゃっ!」 倉庫の隅っこで泣いているとミーナの横から獣のような手が倉庫の扉を貫き、無理やりその扉を外した。 「グルルルルル…」 「ひっ……」 「グルルル…人間…心臓…目…食わせ…ろ…」 悪魔はさっきと違い人間の男性の姿ではなく黒い狼のような化け物になっていた。 ミーナはその姿を見て泣いてるため呼吸ができず喋ることができなかった。 悪魔は爪でミーナを突き刺そうとしたがミーナは危機一髪その爪から逃れた。 そして爪の威力が強すぎたため倉庫に逃げ道が出来て、ミーナはそこから脱出した。 「逃るな…心臓…食ワセロ!」 「きゃぁぁぁ!」 悪魔は爪を伸ばしミーナを切り裂こうとした。 カキィィィン!! ミーナの目の前で剣が当たる音かした。 悪魔の爪はミーナの目の前で謎の黒いローブを纏った人が異様に大きい大剣でそれを防いでいた。 「何してんだ、夜遅くに女襲って楽しいか?」 「誰だ…その剣を…どけろ…」 悪魔は途切れ途切れの言葉で言うと腕に力を入れ爪で大剣を押し付けた。 ローブの男は押し付けてくるのを感じ大剣を上に挙げ、悪魔を吹き飛ばした。 「うっ…」 「俺に力で勝てると思うなよ、このクソ悪魔。お前らの様に人間を天敵とするやつがいれば…」 ローブの男が言い終わる前に悪魔は爪を立てていきなり襲ってきた。 グシャァ!! 「俺の様に、悪魔を天敵とするやつもいるんだよ。」 ローブの男は一瞬でも動揺することなく悪魔の首を大剣で斬りとばす。 悪魔は首を飛ばされ、身体は地面に倒れていく。 そしてローブの男は悪魔の胸を貫くと中から黒い物体を取り出しそれを食べた。 「ひぃぃ!」 「安心しろ、俺は悪魔じゃねえ。」 そう言ってローブの男は黒い物体を食べ続けた。 (な、なんなの…この人?あの恐ろしい悪魔をたった一瞬で) 「あの、…すみませんが…」 「何だ?」 「えっと…助けてくださって…ありがとうございました。」 「別に助けた覚えはねえ。これは俺の食事だからな。」 「そうだ、俺の主食は悪魔の心臓だからな。あと人間の心臓と。」 「ひぃっ!」 「大丈夫だ。俺は人間の心臓は食わない主義だ。」 そう言って彼は黒い物体を食べ終わると口の周りを舐めてその場を立ち去ろうとした。 「…あの、待ってください。その、私を家まで送って下さい!そこを真っ直ぐ行くだけでいいのでお願いします!」 「…俺の行き先もこっちだ。好きにしろ。」 ミーナはローブの男について行くことにしすっかり暗くなった道を2人で歩いた。 ローブの男はミーナと歩いてる間喋ることはなく常に無表情だった。 「うぅ…シェスカ…エミー…イルミ…」 「……」 ミーナは殺された友達を思い返し涙を拭きながら歩いていたが男は振り返りもせず黙々と歩く。 他人の感情など自分には関係ないといった感じだった。 しばらく歩いてるとようやくミーナの家に着いた。 「…着いたぞ。」 「あり…がど…ござ…い…ます…」 「いつまで泣いてる。…友達のことは忘れた方がいい。辛いだけだ。」 「忘れられる訳ないでしょ!」 ミーナは男の心無い返しに大声でいった。 「あなたさっきから何なの!?悪魔の心臓食べたり、私が悲しくて泣いても声ひとつかけない。おまけに殺された友達を忘れた方がいいですって?ふざけないでよ!あなたに何が分かるのよ!」 「どーしたのミーナ。夜中に大声出して。」 ミーナの大声で玄関から母親の声が聞こえてきて、はっと我にかえるミーナ。 「…そーだよな。人間は普通、簡単に人のこと忘れられる訳ないよな。悪かった…」 そう言い残し男は左手を前に出すと目の前の空間が広がり、彼はその中に入って姿を消した。 「魔法…使い…?…初めて見た。…だめ…なんか急に頭が…」 ミーナはそのまま意識を失ってしまった。ーーこの世界を作り上げた森羅万象の神、理王(りお)は悲しんだ。 世界に変化をもたらした人間がいつの日か悪魔の王を破壊してくれると願い、自身が持つ"陰"と"陽"の力を混界に残したのだが、その力は悪き心を持つ者の手に行き渡る。 託した想い(力)が、反対に世界の破滅へと導かれてしまう。 神であろうと混界に行く事の出来ない理王(りお)は、取り返しのつかない自分の過ちに心を痛め苦しんだ。 ーーこのままでは、今まで変化を重ね成長してきた混界の世界が消えてしまう。 後悔する理王(りお)は、別世界を見通す鏡を覗きながら、そうならない様に祈る事しか出来なかった。 そんな理王の姿を見ていた者達が2人居た。 2人は理王(りお)の子供達である。 1人は兄のヴィサリオン。世界の時間の流れを視る神であり、未来の選択肢を無数に見通す力を持っていた。 もう1人は妹のアナリセウス。彼女の耳は魂の囁きを聴き、心の奥底に隠れた感情の真実を知る事が出来る。相手の心を読む事が出来る神である。 ヴィサリオンとアナリセウスは親である理王(りお)に内緒で、自分達の力を人間達の居る混界へと解き放つ。 悪き心を持つ者を討つ為に、人知れず自分達の力を混界で生きる誰かに託したかったのだ。 そしてその力を最初に手にしたのは1人の女性である。 その女性は竜の民と呼ばれる種族の娘ヒスイであり、ヒスイはヴィサリオンと同じく未来を見通す力を生まれながらに持っていた。 しかし、ヒスイは約20年前に死した。 悪き心を持つ、ベリエルという男に殺されたのだ。 ヒスイが殺された事によりヴィサリオンの力は再び混界を漂い、そして再び行き着いた。 その行き先はヒスイの息子であるグレン(ルーファス)である。 ヒスイの未来視の力はヴィサリオンの物であり、その力は人知れず息子であるグレンに受け継がれたのだ。 ヴィサリオンの力が受け継がれたその後、今まで誰にも宿らなかったアナリセウスの力がある女性の肉体に宿る。 その女性の名前はミーナであった。 ミーナの読心の力は今まで謎に包まれていたのだが、本当は神の力なのであった。 未来を見通す力と、心の奥底を読む力。 2つの力を持つ者達が力を合わせる事で、理王(りお)の力をも超える可能性があった。 しかし今現在、その力を
「…まだ立つのか?」あれだけの攻撃を受けても立ち上がるミーナを見てしぶといと思う一方、言葉が出るのに少し間があった。「…もう力の差は分かった筈だ。ミーナ、お前は確かに強くなった。それでも、俺には敵わない。」「諦めろ。…さっさと、負けを認めろ。」「認めない!」グレンの言葉を遮る様にミーナは言い返す。「私は、グレンの話をちゃんと聞きたいの!」「話?今更、何を聞くつもりだ?」「色々聞きたい事はあるけど、1番聞きたい事だけを聞くわ。グレン、あなたは世界の人達を根絶やしにするって言ったわよね?」「ああ、言った。それがどうした?」「何の為に?あなたが言う"腐った人間"を全て殺せば世界が良くなるの?それとも、ただ単純に恨みを晴らしたいだけ?」「今のグレンは目先の事しか考えていない。怒りの感情に任せてるだけの、先を見据えたビジョンがまるで無い。ただ壊したいと、我儘を言ってるだけにしか聞こえない!」「そんな事しても世界は良くならないし、ライクが言った様にあなた自身も報われる事は無い!」世界の人達を殺す事で解決しようとする考えを真っ向から否定するミーナ。「…じゃあ、話し合いをすれば解決するのか?」そう答えるグレンに対し、ミーナは返答するのに時間が掛かる。「………それは、話してみないと分からない事だと思う…。」「いや、話し合いなんて意味がない。それで解決するなら、戦争なんて起きはしない。」今度はグレンがミーナの言葉を否定した。そして続けて口を開く。「この世界にはな。話し合いの出来る人間と出来ない人間がいる。出来ない人間が国のトップになるから、戦争なんてものが始まる。」「全員が、お前みたいに話し合いで解決出来る訳じゃない!いい加減、現実を見やがれ!」最後に感情任せにそう言ったグレンの叫びは、彼が経験してきた辛い気持ちの叫びでもあった。国同士の戦争とは、対話では解決しない問題を戦争という暴力で解決しようとする愚行。命の重さを知らない人間が軍事力という力を得た為に起こされる、迷惑極まりない世界を巻き込んだ喧嘩なのである。愚かな国のトップを対話で変える事は出来ない。ならば、力で滅ぼすのみ。そう考えたグレンは、北の大国と世界の腐った人間を滅ぼす事が平和に繋がると考えたのだ。しかし、それに対してミーナは。「…確かに、戦争は国同士の複雑な問題。戦
圧倒的な強さであった。3人がやられる姿を見ていたミーナは、目の前のグレンを見て改めて思い知らされる。「(…3人がこんなにもあっさり…。)」分かってはいた。分かってはいたけど、まさかここまで…。ーー私達は、強くなる為に沢山修行してきた。北の大国との戦争だって、皆んなちゃんと生き残れた。ーー強くなったって、その成果を皆んな実感していた。ーーなのに…。目の前でネルとライクとニケルを一瞬で倒したグレンを目の前に、その努力は無駄だったと言われているみたいであった。ミーナはそう思うと、いつの間にか刀を持つ手が震えていた。その様子を見ていたグレンは、ミーナを見て言った。「…お前、その刀…。」ミーナが持つ刀に見覚えがあるグレン。そう。グレンはミーナの父親であるアガレフの弟子である為、アガレフの刀である煌光心(きこうしん)をよく知っている。アガレフが死んだ事を知らないグレンは、何故ミーナが持っているのか分からなかった。刀の事を聞かれた事により、ミーナは父親の事を思い出すといつの間にか震えが無くなった。ーーお父さん。…そうね、ここで怖気つく訳にはいかない。これは、私が選んだ事なんだから!まるで死んだ父親が心を落ち着かせてくれているみたいであった。そして父親を思い出す事により恐怖心が無くなったミーナは右手で刀の柄を持ちながら言った。「…これは、私の死んだお父さんが私に託した刀。煌光心!この煌めく光の心が、あなたの復讐を断ち切る刃(やいば)となる!」死んだお父さん。それを聞いてグレンは理解した。「(そうか。…ミーナがその刀を持っているという事は、呪いが発動したのか。そうまでして、娘に会いたかったのか。)」グレンはアガレフから[愛反する呪い]について聞いている為、ミーナが刀を持っている事からその時の状況を察した。ーー今の俺には…関係無い。「…お前の剣術がどんなものなのか見てやる。最初は手加減してやるよ。今の俺とお前とじゃ、戦いにすらならないだろうからな。」あの時、レミールでミーナに修行のアドバイスを出していた時と同じ様に、グレンはミーナにハンデをあげようとした。(第22話参照)「俺はこの場から動かない。黒炎も使わない。だから、好きな様に掛かって……」その刹那。グレンの左肩から縦に掛けて斬り傷が出来、その斬り傷から血飛沫が飛んだ。光の速度
それから各々、これからの動きについて再確認した。まず、グレンが待つ竜の遺跡に行くのはミーナ、ネル、ライク、ニケル。この4人は日が変わる時間に出発する。カイル、エミル、フィナ、ギンジ。そしてグロードは現在戦闘不能の八握剣(やつかのつるぎ)に代わり、北の大国が隠し持つ魔導兵器に備えてノームで待機。そしてアルバスとロゼアは再び地下牢へと連れて行かれる事となるだろう。話し合いが終わり、全員が動き始めようとするとライクがグロードの所へ行く。「グロード。…さっきは、殴ってすまなかった。」ライクは怒りに任せて殴った事をグロードに謝罪した。「良いんだ。ライクのお陰で、改めて自分を戒める事が出来た。逆に感謝する。」グロードは優しくそう言い、先程殴られた事に対しては気にしていない様子であった。「…あの。」するとライクの後ろから彼を呼ぶ声が聞こえる。「ん?あんたは北の大国の…。」「はい。ロゼアと言います。」話し掛けてきたのはロゼアであった。「さっき、あなたはグレンという男の事を思って怒っていましたけど。その、グレンとはどういった関係なんですか?」「関係?そんなもんねえよ。会った事もねえし。」「会った事もない?それなのに、どうしてそんなに怒れるんですか?」不思議で仕方なかった。見ず知らずの人の為にそこまで怒れる理由がロゼアには分からなかった。分からないが為に、その真意が気になったのだ。「言葉で説明すんのは難しいけどよ…何だろうな…。」「グレンって奴のされてきた事を俺に置き換えたらどう思うか。そう考えたら辛かっただけだ。」「会った事も無いし俺の勝手な想像だけどよ、俺はそうやって自分に置き換えて人の気持ちを考える様にしてんだ。間違ってても良い。分かろうとする気持ちだけでも、相手と理解し合える一歩に繋がんだよ。」ライクの言葉にロゼアはエミルに言われた事を思い出す。「直接的な解決にならなくても、あんたがそうやって言い続ける事で必ず誰かが理解してくれる筈だよ!私も、今回の事であんたの辛い気持ちが少しだけ分かったわ!」「それに、自分の気持ちを誰かに打ち明ける事で自分に掛かる負担も減るわ!1人で抱えてた物が分散されるから、気持ちも軽くなるの!無駄な事なんて、絶対に無いわ!」言い続ける事で必ず誰かが理解してくれる筈。自分の気持ちを誰かに打ち明ける事で自
ネルの空間移動で全員東の大国の城に転移した。現在この城は北の大国との戦争で負傷した者達を治療する救護所の様になっていた。この国の人達は既に他国へ避難誘導は終えている為、建物の被害に比べると人的被害は最小限に抑えられている。しかし、先行部隊とはいえ特殊特攻部隊との戦いによって数多くの負傷者が居た。八握剣(やつかのつるぎ)のメンバーはギンジ以外全員が負傷していた。バンジョウはラーケウスの毒に犯されていたが、体内の毒素を早急に取り除いた為、しばらく身体を休めれば元の状態に戻るそうだ。ゴウシ、ルキア、ヒナタ、クロツチはロゼアの痛み共有(シェア・リンク・ペイン)で多数の銃弾を受けた事により、意識は戻ってはいるものの安静が必要な状態だ。スイゲツに至っては、意識は取り戻したもののロゼアが首を刺した事により腕に麻痺が少し残っている。完全に治るかどうか分からない状態だった。現状、八握剣のメンバーはすぐには戦えない状態である。一方、フィナとライクとニケルは。「………おかわり!」「僕も!」机に座りながらガツガツと何かの丼ものを貪る様に食べていた。既に1人だけで10杯の器が重ねてある。彼らもラーケウスの毒を多量に吸っていた筈なのに、他の人達に比べると回復が早かった。寧ろ普通の健常者より元気そうな感じもする。「…ライク、ニケル。」カイルが呼びかける声にライクとニケルは気付き、箸を止めてみんなの方を見た。「おお、皆んな!無事で良かったぜ!」「本当に!皆んな生きてて本当に良かったよ!」ライクとニケルはそれだけ言うと、再び丼ものを食べ始めた。「…えっと、あんた達…。毒を喰らってこっちに運ばれたって聞いたんだけど…。」エミルは聞いていた情報と、目の前の光景とが合わない事に戸惑っていた。「なんか、月の民だから毒の治りも早いみたいよ。」近くのベッドで上半身だけ起こしていたフィナは呆れた様にライク達の補足をした。「!…フィナさん!もう大丈夫何ですか?」「ええ。私は鎧を砕かれただけで、致命傷になる様な傷は無いから大丈夫よ。」フィナもアルバスとの戦いにより負傷していたが、大きなダメージにはなっていない為、すぐに回復していた。東の大国は医療が発展しており、更に国中の医師達が集まっている為、適切な処置が迅速に行われていたのだ。その為、重症だった八握剣(や
時は少し遡る。ここは東の大国。そして、上空から突然、北の大国本隊の魔導戦艦が50隻現れた場面に戻る。上空は朝方の筈なのに、その50隻の魔導戦艦によって空に浮かぶ雲の様に覆い尽くされる。世界が絶望の色に染まったかの様であった。「何で…北の大国には、グロードさんが居る筈なのに…。」上空を飛行する魔導戦艦を恐怖に満ちた目で見つめながら口を開くミーナ。「…グロードさんが…あり得ないよ。少なくとも、肉体的に何かあったとは考えられない。」「カイルの言う通りだ。あの人がやられる訳が無い。あるとすれば……」ネルでも持っていなかった情報。それは魔導戦艦の隠してある場所である。魔導戦艦の性能を知っていたネルは事前にその事を全員に伝えていたが、肝心の隠し場所まではネルでも把握しきれなかったのだ。当然といえば当然。軍事国家に限らずどの国でも兵器の国外流出は命取りとなる。その為、兵器はより見つかりにくい場所に隠しておきたいものだ。「グロードさんでも、奴らの兵器の隠し場所は見つけられなかったのか……分身の僕に告ぐ。魔導戦艦で、奴らに魔導砲・アステリアを放て。」ネルは先行部隊が乗っていた魔導戦艦を奪取した分身達に向け、無線機で命令した。すると、上空に飛行する1隻の魔導戦艦が50隻の魔導戦艦に向けて魔導砲・アステリアを放つ。しかし、放たれた魔導砲・アステリアは50隻の魔導戦艦に当たる事なく、霧散し消えていく。そう。本隊の魔導戦艦は全て無効魔力機構(アンチ魔力システム)が働いている為、魔力を凝縮した高出力のアステリアであってもそれらの攻撃を無効にする。攻撃を無効にするだけで、同じ様に魔導砲・アステリアは放つ事が出来る為、今度は本隊の魔導戦艦が同じ様に魔導砲・アステリアを放った。そしてネルが奪取した魔導戦艦は呆気なく破壊される。魔法が通じない上に、破壊力のある力を保有する。魔法社会においてこれ程脅威になる事はないだろう。正に、人という罪深き存在が生み出した負の産物である。「……こうなったら、僕がやるしか無いのか…。」「おい、待てよ!幾らネルでもあの数相手は無理だ!」「僕以外に誰がやるんだ?取り敢えず、擬似・ブラックホールで魔導砲を止める事は出来る筈だ。」「そんなのいつまでも保つ訳ねえだろ!?」「じゃあ、このまま黙って見てれば良いのかい!?」カイル
そして現在、俺はこの国の危機を守らなければならない!そのために俺が…俺が…!! 「うわぁぁぁぁぁあ!!!!」 カイルが思いっきり剣を振ると黒い根っこは根元から一気に切り落とされ、切られた部分が霧散していった。 多少時間を稼げるが再生を続けるこの黒い根っこは10秒もあれば元どおりの状態に戻れた。 「このままじゃ…このままじゃ…」 諦めるな!カイル! エミルの声が頭の中で蘇った。 「そうだな、よし!俺も本気出さないとな。」 するとカイルの剣が黒く変色し、瞳が黒から赤く変わった。 「一発で止めてやる!」 カイルは縦に思いっきり振ると根元まで一直線に切れていった
グレンの魔力が溜まるまであと2分をきったがカイルにしてみたらこの時間は非常に長く感じた。 腕の筋肉が痙攣しすぎて既に感覚が無くなっていた。 「あともう少しだけ持ち堪えろ、騎士団の団長。あと少しでこの悪夢を終わらせてやるよ。」 「たの…むっ!」 しかし、黒い根っこは時間が経つに連れて再生するスピードを上げてくる為どんどん追い込まれていくのだった。 だめだ…追いつかない! そう思った時、カイルの頭の中で声が聞こえた。 「あんたって、すぐ諦めるよね。なっさけないなー!」 その声は綺麗な声であるが口が悪く少し男勝りな感じがした。 そして頭の中でその声の主を連想させた
「うわぁぁ!もう2人ともなんでこんなに強いのよぉ!」 この2人の衝突に巻き込まれたくないミーナは建物の陰に避難した。 2人は剣を交じり合わせながらお互いを褒めた。 「俺の双剣を直で受け止めた人はもしかしたら君が初めてかもしれないね。」 「お前も、俺の剣を受け止めるとは中々だな。」 「それは光栄だね。じゃあこれはどうかな?」 カイルは一旦グレンから離れると横一直線に2つの剣を振った。 するとグレンのそばにあった建物が斬れて上からぐずれ落ちてきた。 その建物の残骸を刀で真っ二つにし、再びカイルに近づこうとした。 「俺がこんなヤワな攻撃でダメージを与えれるわけない
血だらけの悪魔に対してカイルは1つも攻撃を喰らっていないため、無傷だった。 そして、悪魔はあることを思い出した。 「お…思い出したぞ!お前は、イフリークの守護神だな?」 「……」 カイルは返事を返すことなく、コクっと頷いた。 「まさか、神級魔導師が相手とは。だが、このPDO(プロジェクト・デビル・オペレーター)の俺が負けるなどありえない!」 そしてPDOは地面に手を置くと周りに地割れが起こった。 カイルとミーナはあまりの揺れに体制を崩しそうになった。 「お前の魔法は影だ!その影を無くしてやればお前は何もでき…」 すると悪魔の背後から別の影が発生した。 そ







