LOGIN10年後、人々は悲劇の国キュアリーハートをこう呼んだ。
赤い地獄(レッドヘル)と。 今では化け物が住処としているらしく人間の立ち入りを禁止した。 化け物は人間の心臓と目が好きらしくそれを取って食べるので人は化け物の事をまるで悪魔のようだと言う。 そして人間の心臓を求めて他の国へ移動する悪魔もいる。 しかしこの世にはそんな悪魔に対抗する力があり、それを人々はこう呼んだ。 ー悪魔祓い(デビルブレイカー)と。 「ねぇ、聞いた?隣の国でまた悪魔の被害があったらしいわよ?」 「またなの?もう何度目なの?」 「ほんと、いい加減やめてほしいよねー。どうせ悪魔なんて噂話でしょ?」 学校帰りの女子高生たち。 ここはあのレッドヘルからかなり東の方に離れた静かな町(クレーアタウン)。 他の国に比べて悪魔の被害が全くなく穏やかな田舎町である。 この町の人々は悪魔の被害にあわないせいか悪魔なんて噂話、犯罪者が増えただけだ。っというのがこの町の人たちの本音だった。 「ねぇ?そう思うでしょ、ミーナ?」 「え?あたし?」 友達の1人がいきなりミーナと呼ばれた大人しそうな女の子に聞いてみた。 しかし、 「あたしは…いると思うかな、悪魔?」 ミーナと呼ばれた女の子だけは他の子とは違う答えが出たのでその友達は反発した。 「はあ?なんでいると思うの?」 「え、なんでって言われても…その…だってさ、よくちっちゃい頃よく絵本で読んでもらってなかった?悪いことすると悪魔になるとか、あと夜に子供だけで遊んでたら悪魔に…」 「あははははは!!」 ミーナの子供のような発言に他の友達は大声で笑った。 「全くミーナは可愛いわね!そんなの大人が考えたおとぎ話に決まってるじゃん!」 「ほんと!そのあと王子様が悪い悪魔を正しい心でやっつけましたとさっ、ってやつでしょ?ちょーウケる終わり方じゃん!」 「やっぱミーナは面白いわ」 「でも悪魔は実際に…」 「はいはい、ミーナもういいよ。あー面白かった。ミーナのおかげで気分も良くなったしこれから遊びに行かない?」 「おお、いいねぇ。行こ行こ!」 「ミーナも行こ!」 「え、あ、うん!」 (悪魔は本当にいると思うんだけどなー。) ミーナの悪魔話によって気分が良くなりワイワイ騒ぎながらその場を去った。 「……………ふん。バカな女め。」 ミーナの友達が遊ぼうと言ってからかれこれ2時間。彼女達はというと今流行りのいうと(マジックファンタジー)と呼ばれたゲームで遊んでいた。 マジックファンタジーというのは魔法の箒を使って飛び、魔法で作られた異次元空間に飛んでるプログラムの敵を魔法の銃で撃ち落とすという現代のバ○オハ○○ドの様なものであった。 この世界の学生達にとても人気でミーナ達もこれにすごくハマっていた。 「ねえ、もう帰ろうよ。」 箒に乗ってるミーナが言った。 「えー、今良いとこなのに。」 「だって早く帰らないと親に怒られるしそれに夜は…」 「また悪魔でしょ?はいはい。みんな帰ろっか。」 そういうとその友達は箒から降りるとさっきまで飛んでた異次元空間からゲームセンターのようなところに戻った。 「はい、お疲れ様です!またのご利用お願いしますー。」 「じゃ、帰るとしますか!」 ミーナ達はすっかり暗くなった夜道を歩いて帰ろうとした。 店を出てからの帰り道は普段は明るくても夜になれば真っ暗にでほとんど前が見えない状態だった。 ミーナは怖がりなので隣の友達の腕を掴みながら横を歩いていた。 「ちょっとミーナ。くっつきすぎたら歩きにくいよ。」 「だってここ夜になると怖いんだもん。」 「相変わらずねミーナの怖がりは。」 「ねえねえ。今度ここでさ肝試ししない?」 「それいーね!ミーナ先頭でやろ!」 「む、無理無理無理無理無理~!ー!!!」 「あははは。」 夜の怖い道も友達といればこの時までは楽しく思えた。 そう、この時までは。 歩いて行くとその先には分かれ道がありさっきよりは少し明るめの場所がある。 そこまで行くと左の道から黒いスーツを来た男性が歩いてきて急に立ち止まってミーナ達を見つめていた。 「あれ、あの人誰だろう?」 「さあ?てかなんでこっち見てるんだろ?」 「まああんな人私らに関係ないし帰ろ。」 そういって男性の目線を無視して歩こうとした。 グチャッ ミーナの横で何か嫌な音が響いた。 「…え?」 男の手は友達の胸を貫き、友達はその場に倒れてしまった。 しかも男の手には何か赤黒い物体を持っていてそれが心臓といち早く気づいたのはミーナだった。 「あ、悪魔……」 「きゃぁぁぁぁああ!!」 他の2人の友達とミーナは大声を出して全速力でその場から走って逃げようとした。 しかし、全速力で逃げようとしても所詮はまだ子供の女の子。 男性の姿をした悪魔は逃げる友達に一瞬で追いつき首元を掴んだ。 「いや…やめて~!!」 そしてその友達の胸を貫き、さっきの友達の心臓と二つまとめて食べた。 「ジュル…ジュルジュルルル…」 心臓を食べる悪魔の姿を見て腰を抜かした友達はその場にへたり込んでしまい、地面を這いつくばりながら逃げようとした。 「ひっ…ひっ…ひっ…ひっ…」 這いつくばってるところを悪魔は手でガシッと足を掴んで自分のところまで引きずった。 「助けて!ミーナ……」 カブッ!ガブガブッ! 残されたミーナは友達の変わり果てた姿と今食べられてる友達を見て恐怖で震えていたが今がチャンスと思い走って逃げた。 「ハァ…ハァ……嫌だ、嫌だ!食べられるなんて嫌だ!」 この町では親は子供にこう言った。 「悪い子は悪魔に心臓食べられるぞ。」っと もちろん子供の躾の為に使っているだけで大人でさえ悪魔が本当に実在するとは思っていない。 ミーナは走って逃げるがさっきの場所とは違い道が暗くてミーナ自身何処を走っているか分からなくなった。 そして行き着いた場所は誰も使ってない昼間子供が遊ぶような空き地だった。 ここの空き地は誰の土地でもなくそれほど広くもないので誰もこの土地を買おうとせず殆どは近所のゴミ捨て場になっていた。 そのゴミ捨て場の中に倉庫が捨てられていていたのでミーナはその中に隠れた。 「ハァ、ハァ、…うぅ、みんな死んでしまった…本当に悪魔がいるなんて…」 ミーナは倉庫の中で落ち着きを取り戻したが殺された友達の姿が脳内にあらわれ、涙を流す。 「うぅ、お母さん。お父さん。…助けて…」 ガシャァン!! 「きゃっ!」 倉庫の隅っこで泣いているとミーナの横から獣のような手が倉庫の扉を貫き、無理やりその扉を外した。 「グルルルルル…」 「ひっ……」 「グルルル…人間…心臓…目…食わせ…ろ…」 悪魔はさっきと違い人間の男性の姿ではなく黒い狼のような化け物になっていた。 ミーナはその姿を見て泣いてるため呼吸ができず喋ることができなかった。 悪魔は爪でミーナを突き刺そうとしたがミーナは危機一髪その爪から逃れた。 そして爪の威力が強すぎたため倉庫に逃げ道が出来て、ミーナはそこから脱出した。 「逃るな…心臓…食ワセロ!」 「きゃぁぁぁ!」 悪魔は爪を伸ばしミーナを切り裂こうとした。 カキィィィン!! ミーナの目の前で剣が当たる音かした。 悪魔の爪はミーナの目の前で謎の黒いローブを纏った人が異様に大きい大剣でそれを防いでいた。 「何してんだ、夜遅くに女襲って楽しいか?」 「誰だ…その剣を…どけろ…」 悪魔は途切れ途切れの言葉で言うと腕に力を入れ爪で大剣を押し付けた。 ローブの男は押し付けてくるのを感じ大剣を上に挙げ、悪魔を吹き飛ばした。 「うっ…」 「俺に力で勝てると思うなよ、このクソ悪魔。お前らの様に人間を天敵とするやつがいれば…」 ローブの男が言い終わる前に悪魔は爪を立てていきなり襲ってきた。 グシャァ!! 「俺の様に、悪魔を天敵とするやつもいるんだよ。」 ローブの男は一瞬でも動揺することなく悪魔の首を大剣で斬りとばす。 悪魔は首を飛ばされ、身体は地面に倒れていく。 そしてローブの男は悪魔の胸を貫くと中から黒い物体を取り出しそれを食べた。 「ひぃぃ!」 「安心しろ、俺は悪魔じゃねえ。」 そう言ってローブの男は黒い物体を食べ続けた。 (な、なんなの…この人?あの恐ろしい悪魔をたった一瞬で) 「あの、…すみませんが…」 「何だ?」 「えっと…助けてくださって…ありがとうございました。」 「別に助けた覚えはねえ。これは俺の食事だからな。」 「そうだ、俺の主食は悪魔の心臓だからな。あと人間の心臓と。」 「ひぃっ!」 「大丈夫だ。俺は人間の心臓は食わない主義だ。」 そう言って彼は黒い物体を食べ終わると口の周りを舐めてその場を立ち去ろうとした。 「…あの、待ってください。その、私を家まで送って下さい!そこを真っ直ぐ行くだけでいいのでお願いします!」 「…俺の行き先もこっちだ。好きにしろ。」 ミーナはローブの男について行くことにしすっかり暗くなった道を2人で歩いた。 ローブの男はミーナと歩いてる間喋ることはなく常に無表情だった。 「うぅ…シェスカ…エミー…イルミ…」 「……」 ミーナは殺された友達を思い返し涙を拭きながら歩いていたが男は振り返りもせず黙々と歩く。 他人の感情など自分には関係ないといった感じだった。 しばらく歩いてるとようやくミーナの家に着いた。 「…着いたぞ。」 「あり…がど…ござ…い…ます…」 「いつまで泣いてる。…友達のことは忘れた方がいい。辛いだけだ。」 「忘れられる訳ないでしょ!」 ミーナは男の心無い返しに大声でいった。 「あなたさっきから何なの!?悪魔の心臓食べたり、私が悲しくて泣いても声ひとつかけない。おまけに殺された友達を忘れた方がいいですって?ふざけないでよ!あなたに何が分かるのよ!」 「どーしたのミーナ。夜中に大声出して。」 ミーナの大声で玄関から母親の声が聞こえてきて、はっと我にかえるミーナ。 「…そーだよな。人間は普通、簡単に人のこと忘れられる訳ないよな。悪かった…」 そう言い残し男は左手を前に出すと目の前の空間が広がり、彼はその中に入って姿を消した。 「魔法…使い…?…初めて見た。…だめ…なんか急に頭が…」 ミーナはそのまま意識を失ってしまった。他国への軍事侵攻と併合を繰り返すことで領土を拡大している巨大な大国。ここは北の大国ウンディーネ。魔力資源と軍事拡張を国家存続の核とする極端な軍事国家であり、その統治思想は「戦果こそが存在価値」という歪んだ成果主義で統一されている。戦争で功績を挙げた者は地位・富・名誉を得る権利が与えられ、失敗者や非戦闘員には価値がほぼ与えられない。戦争で功績を挙げられなくとも、国家の軍事力拡大に繋がる軍資金を納めれば国から認められる。この仕組みを国民達に徹底させる為、この国では目に見える形で国民を上級、中級、下級という風に位置付け差別化した。どういう事か?その位置付けは国民の居住地域で分けられた。上級は名前の通り、貴族や戦争功労者など富裕層を指す。中級の国民は主に庶民の人達であるが、この者達は努力次第では軍に入隊し功績を上げる事で上級へと位を上げる事が出来る。そして下級は名前の通り、国の中でも最下層の人間の事を指す。大抵の下級国民が暮らす場所は政府の目に届かない場所に位置している為、治安が悪く劣悪な環境。ここには国に対する反逆行為を行った者、犯罪を行った者、北の大国の軍事侵攻により領土を奪われたその土地の人達が住んでいた。以前ライクとニケル、グロードが北の大国に訪れた際に出会った孤児の兄弟も下級国民であった。(第24話参照)下級国民は全てにおいて最底辺であり、人権というものは殆ど存在しない。これは領土を奪った他国の人間が自国に対して反撃しない為の抑止力にもなるが、それだけでは無い。先程説明した様に中級国民も犯罪や反逆行為を行う事で下級国民に成り下がる可能性があり、国民はそれを恐れていた。ーーこんな底辺の人間にはなりたく無い。こうして劣悪な環境の中で過ごす最底辺に自分もなる可能性がある事を知らしめる。それにより、国民全員に危機感を持たせながら国の為に必死で働かせられるのだ。また、人間とは自分より下を見て優越感に浸る生き物。自分達よりも底辺の人間が居る事により優越感に浸らせれば、国民のストレスの捌け口は自然と下級国民へと移る。この「働き蟻の法則」にも似た様な差別化の仕組みが、北の大国という巨大な軍事国家を成り立たせていた。「軍事の為に働かざる者、人としての権利を得るべからず。」北の大国にはその様な言葉が昔からあった。この国民の差別化。一見
魔導戦艦。それは北の大国が保有する、空中を駆ける全長200m、全幅80m、全高75mを誇る巨大飛行戦艦である。戦艦の全方位には大量の巨大な大砲が敷き詰められてある。それら全て、[魔導砲・アステリア]と呼ばれる以前グレンが魔導兵器であるレイクと戦った時に使用されていた大砲が搭載されている。(第36話参照)軍事大国である北の大国ウンディーネ軍の技術開発局が開発したこの戦艦。実は東の大国ノームにとって因縁のある存在であった。「魔導戦艦。我ら東の大国の技術を盗んでそれを軍事転用した巨大飛行戦艦か。」バンジョウの言う通り、この魔導戦艦は約100年前に東の大国が開発した魔力式四輪駆動車の技術を改良されて作られた。100年前、東の大国ノームにやってきた北の大国ウンディーネ出身の亡命者が居た。ウンディーネは諸国周辺の国に戦争を仕掛けては勝利して自国の領土を拡大していく軍事国家であり、戦争は絶対正義であるかの様に指導される。戦争、又は軍事に反対的な意見を持つ人間は処罰の対象となる為、それが嫌で亡命する北の大国の人間は当時珍しく無かった。ノームはそのウンディーネからやってきた亡命者に仕事を与え、彼は元々軍の整備士の仕事をしていた為、機械的な物を作る仕事を与えた。しかし、これは大きな間違いに繋がるのであった。数年後、その亡命者は突如ノームから居なくなり、その数年後にウンディーネ軍がノームに対して戦争を仕掛けてきた。当時ウンディーネの魔導戦艦が、ノームで作られていた魔力式四輪駆動車と全く同じ技術を使用して作られていた為、それに気付いたノームの国民は怒った。ーー亡命してきたあの男は、我々の技術を盗む為のウンディーネ軍が遣わせたスパイだったのだと。そして100年前、この事がきっかけで北と東の大国は規模は小さいが戦争に発展しており、戦争が終結してからその後4大国間同士で不可侵条約は結ばれているが未だ北と東の関係性は悪いままである。(第16話参照)今までは嫌がらせの様な北の大国のミサイルを東の大国近辺に放っていたが、今回の様な魔導戦艦で領空に入ってきた事は一度も無かった。明らかな領空侵犯(りょうくうしんぱん)であり、東の大国ノームに対する威圧行為だ。到底許される事では無い。「このままでは国民が危険だ!一刻も早く迎え撃つ準備を!」ギンジは八握剣(やつかのつるぎ)
カイルの影の斬撃によって舞い上がった黒い魔力が引いていく。「…ミーナちゃん!大丈夫か?」幾ら本気の勝負だとしても、あれだけの攻撃をまともに喰らえばただでは済まない。心配になったカイルはすぐに影の円展開を解除し、ミーナの方に駆け付けた。しかし、ミーナは何事も無く立っていた。「…あれ?私、確かにカイル君の攻撃を喰らった筈だけど?」傷一つ付いていないミーナは自分自身でも何が起きたのか分かっていない表情をしていた。するとバンジョウが終了の合図と一緒にその理由を説明した。「勝負あり!カイル殿の勝ち!…2人とも、中々凄い戦いだった。」「この道場は今日だけ特別な"結界"を張ってるんだ。安全にテストが出来るように、[この中では如何なる理由があっても他者を殺す事が出来ない]という条件を付け加えて。」「結界?」初めて聞く用語に首を傾げるミーナ。するとグロードがバンジョウに聞いた。「結界術を扱えるのですか?」結界術。それは魔法とは違い、魔力では無く条件を成立させる事により一定範囲の空間に結界を張る術である。「ええ。まあ我は簡単な結界術しか扱えないですけど。条件が厳しくなるとそれだけ術者に掛かるリスクも高くなるから。」リスク。それを聞いてグロードは少し疑問に思った。もしかすると、ベリエルが使った呪いというのはこの結界術がベースなのかと。しかし確証がない為、思っていても皆んなには言わなかった。「では、気を取り直して。今度は…」バンジョウは他の人のテストを行う為に仕切り直そうとするが、その時であった。バンジョウの腕に付けていた腕時計から大きな音が鳴り始める。ピリリリリリリリ!!!あまりにもうるさい音にびっくりするカイル達であるが、八握剣(やつかのつるぎ)のメンバーだけは全員緊張感のある顔になっていた。何故ならこの音は彼らにとっての緊急事態を意味するからだ。バンジョウは腕時計に付いてるボタンを押してその音を止めると、腕時計のレンズから人の姿が現れる。「こちらスイゲツ!た、大変です!バンジョウさん!」ホログラムで映し出された人物は今日はこの場に来ていなかったスイゲツであった。声の感じからして物凄く慌てているのが分かる。「どうしたんだ、スイゲツ?何故緊急連絡用の通信に繋いだ?」バンジョウとその他の八握剣(やつかのつるぎ)のメンバーは、慌て
エミルとフィナが道場に到着した午前8時頃。実はグロードも既に道場に到着していたのだ。それは丁度ネルが作った修行空間からカイル達が戻ってきた後、ボロボロの姿になったカイルを見てエミルがネルにキレていた時だった。「お前ぇ!!…カイルに、何をした!!」怒鳴り声は外までよく聞こえてきた為、到着したグロードは止めようと思ったのだが、カイルがエミルを制止した。カイルは事の顛末を後から来たエミルとフィナに説明した。「(成程。ネルはカイル君達に修行を付けてただけなのか。)」外で聞いていたグロードはカイルの説明を聞いて状況を理解した。「(……さて。どのタイミングで入ろうか。)」カイルの説明を聞いていたせいで、道場に入るタイミングを完全に逃してしまう。グロードは取り敢えず気にせずに入ろうと思ったのだが。「何であいつの事そんな簡単に信用するの!?あいつがフィナさんの国でどんな事したのか、カイルは知ってるんでしょ?」再びエミルの声が聞こえてきた為、またまたタイミングを逃してしまう。カイルとエミルはしょっちゅう喧嘩はしてるものの、それは痴話喧嘩に近い感じだ。しかし、今回は違う。エミルは泣きながらカイルに訴えかけていた。そして口論はヒートアップし、捲し立てるエミルに対してカイルが言った。「エミルだってネルの事何も知らないだろ!!」カイルの声にエミルは喋るのをピタリと止めた。そしてカイルは続けて言った。「確かにネルはシルフを壊滅寸前まで追い込んだ。殺した人も星の数だろう。到底世間にも、フィナさんやライクとニケルにも許されないと思う。」「でも、それはエミルも一緒だっただろ?現に元盗賊だったせいでイフリークの騎士団には最初認めてもらえなかった。盗賊なんて、世間から見れば悪人なんだからな。」「な!…違う!私は…」カイルの発言に動揺するエミルだが、ヒートアップしたカイルは喋るのを止めない。「違わない!エミルは自分がされた事と同じ事をネルに言ってるんだ!エミルだけじゃ無い!この場に居る全員、立場が変われば被害者と加害者なんだよ!」「だから皆んな。どっちかがずっと被害者面ばかりするなよ。俺達が偉そうにネルだけを非難する資格なんて、無いんだよ。」カイルの言葉によって道場の中の空気が一気に変わったのがグロードにも分かった。「(カイル君…それは正しい事だが、今
「……だから、俺が強くなる為にネルは修行を手伝ってくれただけなんだ。今回、あいつは何も悪く無い。寧ろ感謝してるくらいなんだ。」カイルはネルの事を誤解しているエミルに今までの経緯を話した。ーーだからこんなにもボロボロだったのか。信用していない相手が自分の好きな人をこんなボロボロの状態にされてエミルが黙ってる筈が無い。けれど、今理由を知った事で誤解が解かれたエミルは落ち着きを取り戻……。してはいなかった。それを聞いたエミルは仰向けで倒れているカイルの方を見ながらボロボロと涙がカイルの顔に滴っていた。そして。「何であいつの事そんな簡単に信用するの!?あいつがフィナさんの国でどんな事したのか、カイルは知ってるんでしょ?」エミルは怒りながらカイルに言うも、その言葉にはどこか心配も含まれている様に感じられる。「ああ。勿論知ってる。けど、昨日ミーナちゃんも言ってた様にあいつにはもう悪意が無い。修行も純粋に俺達を強くする為に手伝ってくれてた。」「そのお陰で俺は昨日よりも確実に強くなれた。」カイルの返答に対し、エミルは負けずに大きな声で捲し立てた。「昨日たった1日しかあいつの事見てないんでしょ!?きっと今はこうやって良いところだけを見せてるだけ!その後から裏切る事だってある筈よ!」「人はそう簡単に変わらない!変われないのよ、悪人は特にね!そんな奴がちょっと良い事しただけなのに、皆んな簡単に騙され過ぎなのよ!」「エミルだってネルの事何も知らないだろ!!」カイルは捲し立てるエミルに負けないくらいの大声で一喝するとエミルは喋るのをピタリと止めた。そしてカイルは続けて言った。「確かにネルはシルフを壊滅寸前まで追い込んだ。殺した人も星の数だろう。到底世間にも、フィナさんやライクとニケルにも許されないと思う。」「でも、それはエミルも一緒だっただろ?現に元盗賊だったせいでイフリークの騎士団には最初認めてもらえなかった。盗賊なんて、世間から見れば悪人なんだからな。」「な!…違う!私は…」カイルの発言に動揺するエミルだが、ヒートアップしたカイルは喋るのを止めない。「違わない!エミルは自分がされた事と同じ事をネルに言ってるんだ!エミルだけじゃ無い!この場に居る全員、立場が変われば被害者と加害者なんだよ!」「だから皆んな。どっちかがずっと被害者面ばかりするな
[ライクとニケル]サイド。目の前の悪魔達に対し、2人共雷神と風神の姿へと変貌した。「一気に潰してやるよ!」「魔力操作"極(ぎょく)"!火雷(ほのいかづち)!」ライクの背中の上から2番目の鼓が光ると右手から高電圧の雷が溜め込まれる。今までの火雷はそのまま一瞬で放たれるも、魔力操作"極(ぎょく)"により溜め込み時間が普段より10秒くらい掛かる。溜め込まれた右手の雷を悪魔達に向けて一筋の矢の様にして一直線に放たれる。ドカァァァン!!!炎を帯びた雷の大爆発は魔力操作"極(ぎょく)"により、普段よりも10倍以上の威力を発揮した。その威力により、1回の爆発で100体以上の悪魔が一気に消滅した。「っしゃあ!やりぃ!」魔力操作"極(ぎょく)"が上手くいき、調子付くライク。ーーこのままやってけば、あっという間に。しかし、そんな希望は一瞬で崩れ去る。ライクの雷で消滅した側から、再び後ろの方から悪魔が再生していった。「いぃっ!?何だ!?何でまた再生したんだ!?」「…成程。どうやらこの修行、悪魔達を全員殺すのが目的じゃないみたい。」「どう言う事だ、ニケル?」「つまり、この永遠に湧き出てくる悪魔を3日間、休みなく戦い続けなければいけないって事だ。」そう。ニケルが言った通り、2人の修行はこの悪魔達を全員倒す事が目的ではない。絶え間なく湧き出てくる悪魔達を魔力操作"極(ぎょく)"を使って戦い続ける為の持久性を鍛える事が目的であった。「だからライク。そんな大技を放ったところで意味は無い。ここからはペース配分を考えて戦わなければいけない。」「成程な。効率良く戦えって事か?」「それだけじゃ無い。こいつらは魔力操作"極(ぎょく)"でしか倒せない。だからもっと成功率も上げないと。」2人は雷神と風神の力による効果で更なる力を得たのだが、持続性が無いのが欠点である。そしてもう一つ。これはライクとニケル自身の問題。2人は雷神と風神の力を過信し、いつしかそれに頼る戦いが定着しつつあった。この修行では2人のその定着した悪癖を直すのに打って付けであったが、それは只直すと言うにはあまりにも過酷な修行であった。ライクとニケルはまだ完成したばかりの魔力操作"極(ぎょく)"はまだ不安定であり、失敗する事の方が多い。その上、魔力を溜める時間に10秒必要というのも、実戦
魔力を貯めていた悪魔の手が突然刃物で斬られたように落ちた。 「なにっ?」 すると今度は周囲にいた悪魔達がバタバタと倒れていき、悪魔の心臓部分には深い切り傷があった。 「まさかっ、俺以外の悪魔がほとんど全滅だと!?」 騎士達はいきなりの悪魔の全滅に戸惑ったがそれが誰の仕業かすぐに分かった。 「これは、もしかして…」 「ああ、間違いない。この魔力は、この魔力は我ら騎士団最年少で最強の方、団長 だ!」 この国の団長は歴代初の10代の団長だが他の国ではこういう噂を聞く。 イフリークの騎士団団長の実力はは数で表すと国の騎士5000人の強さに等しく、 戦場では自分は無傷
南地区 黒いヒビ割れの悪魔が言った通り、この地区にも悪魔がいた。 その中でも黒いスーツを着たスマートな体型の悪魔は騎士団の攻撃を喰らっても倒れることはなく、街を容赦なく破壊していく。 「くそっ!もっと魔砲弾を撃てー!」 「だめです!もう弾が残り少ない!」 「くそっ!こんな時に12騎士長の1から9長は他の国に出張とは…エバルフとカレンはまだ戻ってこないのか!?」 「それが…未だに連絡が取れません!」 「くそっ!仕方がない!俺がやってやる!」 先陣を切って前に出たのはエバルフとカレンと同じ称号を持つ男。 11騎士長(イレブン・ナイツ) サージス・デルモンテ
宝石店を出てからミーナはカレンに案内されながら色んな店に寄り、手には買った服や旅に必要な生活必需品などが入った袋を持っている。 重くなった荷物を持っているミーナを見て微笑ましく思ったカレン。 笑いながらミーナに声をかけた。 「うふふ、いっぱい買い物できて良かったね。ミーナちゃん。」 「はい!本当にありがとうございます、カレンさん。」 「いいのよ。仕事の休みは私1人で買い物してるからあなたみたいな女の子と買い物できて楽しかったわ。」 「えへへっ。そういえばカレンさんは何の仕事してるんですか?」 「私?私は……」 「おーい、カレーン!」 カレンが答えようとした時
あれから数日後、グレンとミーナは旅を続けようやく大国イフリークに到着した。 この世界には東西南北の四つの大国がありここは西の大国で他の4つの国に比べると魔法を主とした文化が発展していた。 「わぁ~!みてグレン!建物があんなにも大きいよ!」 初めて見る都会の建物が珍しいのかミーナのテンションはいつも以上に高かった。 そんなミーナにグレンは呆れた様にため息をついた。 「…さっさとこっちこい。入国の手続きするぞ。」 この国では他国からのテロの防止の為か入国する際に身元と持ち物点検を兼ねた手続きが数カ所ある国の出入り口で行われていた。 もちろん勝手に不法入国すれば国中に警報